地 震 と 津 波、雑 感 ( 続 き )


[ 7、津 波 に つ い て ]

昭和 3 5 年 ( 1960 年 )5 月 23 日 午前 4 時11分( 日本時間 )、南米の チ リ 南部 で マ グ ニ チ ュ ー ド 9. 5 という 世 界 の 観 測 史 上 最 大 の 超 巨 大 地 震 が 発生 し ま し た。

これに よって 生 じ た 大 き な 津 波 は、 平均時速 7 5 0 キロ メートル という ジェット 旅客機 並 み の 高 速 で 太平洋 を 横断 し、約 1 日 後 の 24 日 未 明 に 太平洋 の 真向 か いにある 日 本 列 島 東 北 地 方 の 沿岸 に 到達 し、最 高 波 高 6.4 m 、死者 ・ 行方不明者 142 名、負傷者 855 名 の 被 害 を 出 し ま した。

地震直後 に ハワイ 気象 センター から日本政府 に 地震 の 情報 と同時 に 津 波 警 報 が 伝 えられま したが、経験不足 からか 気象庁 は 津波 の 強 度 を 過 小 推 定 したため、日本 では 津 波 警 報 が 発 令 されなかったことが 被害 を 大 き く した と 発表 されま した。

ところが 実際 は 気象庁 の 地 震 課 長 が 当 時 休 暇 中 で あ り、ハ ワ イ からの 津 波 警 報 の 電 報 が 職 員 の 怠 慢 か ら、 机 上 に 放 置 さ れ た ま ま で い た こ と が 、津 波 警 報 が 発 令 さ れ な か っ た 本 当 の 理 由 で し た。

海上保安庁 所 属 の 青 森 県 八 戸 海上保安部 通信所 の 運 用 係 長 ( 当 直 通 信 士 ) が、津 波 に 襲 われた 際 の 体 験 を 下記 に 記 して います。

こ こ を ク リ ッ ク


巡 視 船 が、東 日 本 大 地 震 の 津 波 に 遭 遇


( 7-1、津 波 の 動 き )

( 4-1、海 溝 型 地 震 ) の 絵 図 で 説 明 した 如 く、ほとんどの 津 波 は 海 底 に あ る 地 形 の 急 激 な 変 動 によって 発 生 するといわれています。海 底 で 地 形 が 急 激 に 変 動 すると、それに 接 する 海 水 が 動 き、 それに と も な い 海 面 も 変 動 します。

チ リ 地 震 が 起き た 際 には、 チ リ の 海 底 で 発生 した 津 波 が、遠 く 離 れた 日本 まで 押 し寄 せま したが、 海 水 そ の も の が 移 動 して 来 たわけではな く 、 海 水 の 波 動 が 伝 わった ので した。

水 の 動 き については、 http://bluebacks.kodansha.co.jp/special/wave02.html の 動 画 を開 き、最上段 の 『 謎 解 き ・ 津 波 と 波 浪 の 物 理 』 動画 2 「 深 水 波 が 進 むとき の 水 の 動 き 」 を クリック して、御覧下 さい。

波動 を 伝 える 表 面 付 近 の 水 は、 円 運 動 し て い る ことに 注 目。

また、津波 が 深 海 から 浅 い 海 に 接近 すると 速度 が 遅 くなり、周期 が 短 く な り、波高 が 増大 する様子 は、  http://bluebacks.kodansha.co.jp/special/wave06.html  を開き、最上段にある 『 謎 解 き ・ 津 波 と 波 浪 の 物 理 』 動 画 6  「 だ ん だ ん 浅 く な る 海 」 を 伝 わ る 長 波 を クリック して、見ることができます。


[ 8、 世 界 津 波 の 日 ]

皆さんは 11 月 5 日 が、 『 世 界 津 波 の 日 』 であることを ご存知 ですか ?。

平成 27 年 ( 2015 年 )12 月 4 日、国連総会第 2 委員会は、日本 を 含 む142 箇 国 の 提案 によ り、安 政 時 代 の 南 海 地 震 津 波 に 際 し て の 出来事 である 「 稲 む ら の 火 」 の 逸 話 の 基となった 11月 5 日 を「 世 界 津 波 の 日 」に 制定 することを 全会一致 で決めま した。

実 を 言 います と 南 海 地 震 津 波 が 起 きた 11 月 5 日 は、当時 の 日本 が 使用 して いた 太 陰 太 陽 暦 ( た い い ん た い よ う れ き、旧 暦 ) に 基 づく 日 付 です。

一 説 によると 当時 の 11 月 5 日 を 明治 6 年 ( 1873 年 ) 以降 使用 するようになった 新 暦 に 直 す と、 12 月 24 日 の クリスマス ・ イ ブ になるために、重 なりを 避 けて、 旧 暦 の 日 付 を 使用 したのだそうです。

嘉永 7 年 ( 安政 元年、1854 年 ) の 安 政 南 海 地 震 津 波 に 際 し て の 出来事 を もとに し た 物語 で、原作 は 小 泉 八 雲 ( こ い ずみ や く も、1850~1904 年、ギリシャ 生まれの 英国人、本名 ラ フ カ デ ィ オ ・ ハ ー ン ) の 英語 による作品 「 A Living God、( 生 き 神 様 )」 を、中井常蔵 が 翻 訳 ・ 再 話 したもので、文部省の 教材公募に 入選 しま した。

昭和12年 ( 1937 年 ) から 昭和 22 年 ( 1947 年 ) まで の 10 年間、国定国語教科書( 国語読本 ) に 掲 載 され、現在 8 4 歳 の 私 も 国 民 学 校 ( 小 学 校 の こ と ) 5 年生 の 時 に 、習 いま した。


( 8-1、物 語 「 稲 む ら の 火 」 の 概 要 )

村 の 高台 に住む庄屋 の 五兵衛 は、地震 の 揺 れを感 じたあと、海水 が 沖合 へ退 いて いく のを見て 津波 の 来襲 に 気付 く。祭 りの 準備 に 心奪 われている 村人 たちに 危険を知 らせるため、五兵衛 は自分 の 田 にある 刈 り 取 ったばかりの 稲の 束( 稲 む ら ) に 松明 で 火 を つ け た。

火事 と 見て、消火 の ために 高 台 に集まった村人たちの 眼下 で、津波 は 猛 威 を 振 るう。五兵衛 の 機 転 と 犠 牲 的 精 神 によって 村人 たちはみな 津 波 から 守 られた。

教科書 の 全 文 を読みた い 人 は 下記 を クリック して、 「 若 者 へ の 応 援 歌 」 の ホーム ページ の 下 半 分 にある、青 い 文 章 を お 読 み下さ い。

こ こ を ク リ ッ ク


[ 9 :地 震 予 知 の 問 題 ]

( 9-1、そ の 幕 開 け )

昭和 5 2 年 ( 1977 年 2 月 ) のこと、東大理学部の助手だった石橋克彦氏が「 地 震 予 知 連 絡 会 」  ( 注 : 参照 ) の 会 報 に 「 駿 河 湾 地 震 の 可 能 性 」 という レ ポ ー ト を発 表 しま したが、それが 問 題 の 幕 開 けで した。

[ 注 : 地 震 予 知 連 絡 会 ]

 通 称 「 予 知 連 」 とは、政府と して 地 震 予 知 の 実用化 を 促進 するために、昭和 44 年 ( 1969 年 ) 4 月、全国 の 地 震 ・ 火 山 観 測 を 所管 する 気 象 庁 ではな く、なぜか 地図の作成 を 所管 する 国 土 地 理 院 に 事務局 を置き、年額 1 億 7 千万円 の 予算 で ス タ ー ト した。

地 震 に関する 観測研究 を 実施 している関係機関や大学の 2 6 名 の 委員で構成され、年 4 回 定期的に開催される。

石橋氏の論文によれば、 「 駿 河 湾 地 震 」 は 切 迫 している恐れがある。正確に言うと、

長 期 的 予 測 の 結 果 と し て、前 兆 現 象 が ( あるとすれば )、い つ 始 まっ て も 不 思 議 で は な い 状 態 で あ る 恐 れ が 強 い 」

と 述 べま した。また他の 研究者 からも、似 たような 発言 が 続 きま した。

その結果、 「 マ グ ニ チ ュ ー ド ク ラ ス の 巨 大 地 震 が、 明 日 に も 東 海 地 方 を 襲 う か も し れ な い 」 という 内容 の 衝 撃 的 見 出 しが、新聞 ・ 週刊誌 などに 掲 載 され、テ レ ビ に 何 度 も 放 映 されま した。

石橋氏の「 東 海 地 震 説 」 は 「 仮 説 の 域 」 を 出 な い に も か か わ ら ず、その 後 「 東 海 地 震 予 知 」 のために、国 策 と して 毎 年 10 億 円 の 予 算 が 投 じられて い き ま した。


( 9-2、カ ネ の 成 る 木 、地 震 予 知 計 画 )

1978 年 に 「 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 」( 略 称、大 震 法 ) が 成立 しま したが、福田 赳夫 首相 の 強 い 指 示 により、僅 か 二 ヶ 月 の ス ピ ー ド 審議 で 作 られ、その 年 の 6 月 7 日 に成立 しま した。

この 法律 は 世界 でも 類 を 見 ない、これから 「 襲 っ て く る ( ? ) 地 震 」 を 対 象 とする 法 律 で した。この 法律 は 東海地震 の 予 知 が 可 能 なことを 前 提 に して、被害 を少 な くするために、社会 や 人々の 生活 を 規制 する 法律 です。

「 大 震 法 」 ( 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 ) に 基 づ いて 東海地震 の 警 戒 宣 言 が 発 せらた ときには、ほとんど 戒 厳 令 のような さまざまな 規制 が敷かれます。その範囲は 静岡県全域 をはじめ、神奈川県 ・ 山梨県 ・ 長野県 ・ 愛知県 の 一 部 にも及 びます。

例えば 東海道新幹線 や 在来線 の 鉄道 は 停 止 し、東名高速道路 は 閉 鎖 され、バ ス も 止 まり、自家用車 の 運 転 も 禁 止 されます。また 銀 行 や 郵便局 も 閉 鎖 され、ス ー パ ー や デ パ ー ト も 閉 店 する し、病院 の 外来 も 閉鎖 されることになって います。

また 学 校 は 休 校 し、 会社 の 従 業 員 は 退 社 させられます。地域住民 は 避 難 させられ、自衛隊 も 出 動 し ま す。

1978 年に 「大震法」 が 成立 してから、地震予知計画 は 5 年 ごとの 年次計画を次々に 更新 していきま した。 予算 も 予 想 し た 通 り に 増 え 続 け、 1994 年 段階 で 年 間 7 0 億 円 になり、地震予知計画 発 足 後 の 3 0 年間 に、 1,800 億 円 が 投 じ ら れ ま した。

しかもこの 予算 には 人件費 が含まれませんが、地震予知関係 の 公務員 も、数百人規模 で 増 やされま した。


( 9-3、地 震 予 知 は、 可 能 な の か ? )

それから 今 日 ( こ ん に ち ) まで 4 0 年 が 過 ぎま したが、東海地方に 「 巨 大 地 震 」 は 起きませんで した。ところが、その 間 ( 1977 年 ~ 2017 年 ) に 、

  • 平 成 7 年 ( 1995 年 ) に 起 き た マ グ ニ チ ュ ー ド 7.3 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 ( 死者 : 6,435 名 ) 。

  • 平成 23 年 ( 2011 年 )3 月 11 日 に 起 きた マ グ ニ チ ュ ー ド 9.0 東 日 本 大 震 災 ( 死者 : 15,894 人 ・ 行方不明者 : 2,562 人 )。

  • 上記 を 含 む マ グ ニ チ ュ ー ド 6 以 上 の 地 震 が 日本 で 16 回 も 起 き、多 数 の 死 傷 者 が 出 た。

  に も か か わ ら ず、「 地 震 予 知 連 絡 会 」  を 初 め と す る 「 地 震 学 者 の 組 織 」 や 各 省 庁 所 管 の 「 地 震 研 究 機 関 」 による 地 震 予 知 や、 事 前 の 警 告 など まった くありませんで した。


( 9-4、東 京 大 学 地 震 研 究 所、地 震 予 知 情 報 セ ン タ ー の 件 )

東大の キャンパス 内 に 東 京 大 学 地 震 研 究 所、地 震 予 知 情 報 セ ン タ ー がありますが、教職員 160人( 2005 年 度 ) ・ 教員 8 0 人 ・ 職員 5 0 人 ・ 研究員 3 0 人 ・ 大学院生 7 0 人、、年間予算 は 4 5 億 円 ( 2 005 年 度 ) です。

看板

この ホ ー ム ペ ー ジ 上 の 表 題 を 見 て 下さ い。英語 で は 色 付 き の 大きな 文 字 で 「 Earthquake Information Center 」 ( つまり、 地 震 情 報 セ ン タ ー ) とありますが、その 下 に 半分以下 の 大 きさで 書 かれた 日 本 語 で は、 「 東 京 大 学 地 震 研 究 所、 地 震 予 知 情 報 セ ン タ ー 」 と な っ て い ます。

つ ま り 日本語 で は 「 予 知 」 の 言葉 を入 れながら、英 文 で は 「 予 知 」 に 相 当 す る 「 Prediction 」 の 文 字 が 、 欠 落 し て い ま す。

看 板 に 「 偽 ( い つ わ )り 」 あ り 、とは こ の ことです。端 的 に 言 え ば、 で き な い こ と を 、あたかも で き る よ う に H P に 表 記 するこ と に、対 外 的 ( 国 際 的 ) に 「 気 が 引 け た 」 の で、英 文 で は 「 Prediction 」 ( 予 知 ) の 文 字 を 抜 か し た の だ と 想 像 し ま した。

更 に 付 け 加 える と 日本 の 国立大学 の 研 究 所 であれば、表 題 に つ い て 自 国 語 表 記 を 外 国 語 表 記 よ り も 上 部 に 書 き、字 の 大 き さを 大 き く す る か、同 じ に す る の が、 国 際 的 な 常 識 ・ 習 慣 と い う も の で す。

地 震 予 知 情 報 セ ン タ ー の 表 示 方 法 で は 、あ た か も 英 米 系 植 民 地 の 研 究 機 関 で あ る か の よ う に、 誤 解 さ れ そ う で す。

外国語表示 聖心女子大学 イタリア大使館

せ め て 航空会社 の 乗組員 の 職 名 ・ 氏 名 の 表示方法 ( 機 内 表 示 板 ) や 、聖 心 女 子 大 学
( University of the Sacred Heart ) の 表 札 を 見 習 って 欲 し い も の で す。 参 考 ま で に、一 番 右 の 写 真 は 東京都 港 区 三 田 ( み た ) に あ る 、 ア ン バ シ ア ータ ・ デ ィ タ リ ア ( イ タ リ ア 大 使 館 ) の 表 札 で す 。

念 の た め 付 け 加 え ます と 国 際 的 に は 自 国 優 先 の 原 則 か ら、例 え ば 安 全 保 障 条 約 に つ い て 、日 本 側 は 日 米 安 全 保 障 条 約 と 呼 び ま す が、 アメリカ 側 で は U. S. - JAPAN Security Treaty と 称 し て い ま す。

国 際 的 な ル ー ル や マ ナ ー を 知 らず に いると、恥 を 掻 く こ と に な り ま す。下 記 を ク リ ッ ク して、 H P の表 題 を 確 認 し て 下 さ い。英 語 で 書 け ば、国 際 的 で あ る と 思 っ て い る の か も 知 れ ま せ ん。

東 京 大 学 地 震 研 究 所 地 震 予 知 情 報 セ ン タ ー


[ 10 : 科 学 的 地 震 予 知 は、 現 時 点 で は 無 理 ]

我々 が 知 る 限 り 「 地 震 予 知 成 功 の 例 」 と して 挙 げられるのは、中国 における 「 海 城 ( かい じょう ) 地 震 」 で した。1975 年 2 月 4 日 の 夜、遼 寧 省 ( りょうねい しょう ) 海 城 市 ( かい じょう し ) 一 帯 で、 マ グ ニ チ ュ ー ド 7. 3 の 地 震 が 発生 しま した。

行政当局 が 事前 に 警報を出 して住民 を 避 難 させており、避 難 が 行 われた 地 域 では 人的被害 が 軽 微 で 済 んだため、結果的 に 地震予知 の 数 少 ない 「 成 功 例 」 となったことで 有名 になりま した。

ところが、後 になって この 地 震 特 有 の 顕 著 な 前 震 が 幸 い し た と 分 析 さ れ、他 の 地 震 予 知 に 適 用 できるものではな い 、と 他 国 か ら 批 判 されま した。


( 10-1、中 国 の 地 震 予 知 の 実 情 )

論 よ り 証 拠 で、翌 年 ( 1976 年 ) 7 月 に 河 北 省 ( か ほ く しょう ) 唐 山 ( と う ざ ん ) で 起 き た 唐 山 地 震 で は、当局 による 地 震 予 知 が で き ず、その 結 果 公 式 統 計 で も、 死 者 2 4 万 人 を 出 し たと いわれています。

しか し 中国 では 「 政 治 的 理 由 」 から 地 震 の 被 害 者 数 を 少 な く 発 表 する 傾 向 があり、唐 山 地 震 の 場 合 も 非 公 式 の 情 報 で は、 6 0 万 人 ~ 8 0 万 人 近 く の 死 者 が 出 たともいわれて います。

そ の せ い で しょうか、地震後 に 地 震 学 者 を 含 め て 外 国 人 の 唐 山 立ち入り が 許可 されたのは、10 年 後 の ことで した。

中国当局 による 地 震 予 知 が 的 中 し た 例 は、 「 海 城 地 震 」 以 後 本年 ( 2017 年 ) 8 月 8 日 に 四川省 九 寨 溝 ( き ゅ う さ い こ う ) 県にある 世界遺産 ・ 九 寨 溝 で 起 きた マ グ ニ チ ュ ー ドの 地 震 を 含 めて、4 2 年間 に 一 度 もありませんで した


[ 11 : 英 国 の 学 術 雑 誌、ネ イ チ ャ ー の 結 論 ]

1869年 ( 明治 2 年 ) に 創 刊 された 英 国 の 学 術 雑 誌 ネ イ チ ャ ー ( Nature ) は、世界で 特 に 権 威 の あ る 学 術 雑 誌 の ひとつと 評価 されており、主要 な 読者 は 世界中 の 研 究 者 で、雑 誌 の 記 事 の 多 くは 学 術 論 文 が 占 めて います。

1999 年 の こ と、その 「 科 学 雑 誌 ネ イ チ ャ ー 」 が、 「 地 震 予 知 は 可 能 か 」 につ いて の 公 開 討 論 会 を 実 施 しま した。この 討 論 会 は 誌 上 で 行 ったのではな く、同誌 の ホ ー ム ペ ー ジ ( メ ー ル ) で 7 週間連続 の 討論を 行 ったもので した。

ホーム ページ での 討論 の 利点 は、反応 が 圧倒的 に早 いことです。世界中 から 賛 否 両 論 が集 まりま した。だが 不可解 なことに、すでに 国家事業 と して 認 知 されて 成 功 していると関係者が主張 している ギ リ シ ャ の、「 地中を流れる 微 弱 な 電流 を使った 地 震 予 知 」 の 研究者 は 参加 しませんで した。

また 当時、世界 で 最 も 多 く の 研究予算(10億7千万、)を 使 っており、突出 した 「 地 震 予 知 大 国 」 日本 からも、誰も討論に参加 しませんで した。ギ リ シ ャ と 日本 は 反 論 を 恐 れ て 、いわば 「 敵 前 逃 亡 」 したので した。討論の 7 週目に出た 結論 は、

一般 の 人 が 期 待 す る よ う な 地 震 予 知 は ほ と ん ど 不 可 能 で あ り、本 気 で 科 学 と し て 研 究 す る に は 値 し な い

というもので した。ここで 「 一 般 の 人 が 期 待 するような 地 震 予 知 」 とは、 「 い つ 」 ・ 「 ど こ で 」 ・ 「 ど ん な 規 模 」 の 地 震 が起きるか、つまり 「 短 期 予 測 」 が きちんと できるこ とを 意 味 して います。


( 11-1、地 震 予 知 に 対 す る、世 論 調 査 )

『 そ の 1 』

阪神 ・ 淡路大震災 から 半年余 り 経過 した1995 年 9 ~10 月 に 内閣府 政府広報室 がおこなった 「 地 震 に 関 す る 世 論 調 査 」 の 項 目 によれば、

質 問

あなたは、現在 の 技 術 で ど の 程 度 の 地 震 なら、そ の 予 知 が 可 能 だと思 いますか。この 中 から 一つ だけ 挙 げて 下 さ い

上 の 質 問 に 対 する 回 答 結 果 が、 青 色 の 数 字 です

  1. 全ての 地 震 の 予 知 が 可 能 である--- 4.0 %

  2. 大 地 震 である マグニチュード クラス 以上 の 地 震 は、予 知 が 可 能 である--- 12.8 %

  3. 特 別 な 観 測 体 制 をとる 「 東 海 地 震 」 については、予 知 が 可 能 である--- 17.8 %

  4. 地 震 の 規 模 の 大 小 に 関 わ ら ず、地 震 の 予 知 は で き な い--- 44.5 %

  5. そ の 他--- 0.6 %

  6. わ か ら な い--- 20.3 % で した

庶 民 は、 予知 に 対 して かな り 厳 し い 評 価 を して いる、 と 思 いま した。


『 そ の 2 』

平成 20 年 ( 2008 年 ) 9 月 に 時事通信社 が、「 地 震 に 関 す る 世 論 調 査 」をおこないま したが、

質 問

    地 震 発 生 の 予 知 は 難 し い の で、そのため の 研 究 に 力 を 入 れ る よ り は、地 震 が 発 生 し た 後 の 被 害 を、 最 小 限 度 に 抑 え る 研 究 に 重 点 を 置 い た 方 が よ い

に 対 して、 回 答 結 果 は

  1. 賛 成--- 3 6.2 %

  2. どちらかと言えば 賛 成--- 3 9.0 %

  3. どちらかと言えば 反 対--- 1 1.2 % 

  4. 反 対--- 5.7 %

で した。この 回答結果 を 見 る 限 り、 7 5.2 % の 人 が 地 震 予 知 に 疑 問 を 持 っ て い る こ と が わ か ります し、地震予知 優先派 は 1 6.9 % で し た。


( 11-2、日 本 の 地 震 研 究 は、 予 知 で は な く、後 知 )

アメリカ の 著名な 地 震 学 者 チャールズ ・ リ ヒ タ ー によれば、「 地 震 を 予 知 で き る の は、 愚 か 者 と、 ウ ソ つ き と、 イ カ サ マ 師 だ け で あ る 」 と い い ま した。

石橋氏 の 論文 によれば、 「 駿 河 湾 地 震 」 ( 東 海 地 震 ) は 切 迫 している 恐 れがあると いうだけで、 時 間 的 許 容 範 囲 が 全 く 述 べ ら れ て い な い の で す。東海地震 はこれまで 4 0 年間 起きませんで したが、5 0 年 後、100 年 後 までも、石橋氏 の 地 震 予 知 は 有 効 なのです。

仮 に 8 0 年 後 に 東海地震 が 起 き た と しても、 地 震 予 知 は 成 功 し た こ と に な る で しょう。何 しろ 予 知 に タ イ ム リ ミ ッ ト 、つ ま り 賞 味 期 限 (?)が 無 い の ですから。皆 さ ん は タ イ ム リ ミ ッ ト のない 予 知 に 納得 できますか ?。


( 11-3、地 震 の 前 兆 現 象 は、幻 想 で し か な い )

地 震 予 知 連 絡 会 の 会 長 を 務 め た 故 浅田敏氏 によれば、

大きな 地 震 に は 必 ず 前 兆 は あるはずです。百 キ ロ ( メ ー ト ル ) 、二 百 キ ロ ( メ ー ト ル ) と い う 地 盤 が 動 く の ですから、その前 に 何 も 起 こらない と は 考 え ら れ ま せ ん( 雑 誌、ニュートン、1992 年 9 月 号 )

いわゆる 地震 の 前 兆 説 ですが、大きな 地震 の 前 に 前兆 を 見 たという 話 は 平安時代 ( 794 ~ 1192 年 ) の 書 物 にもありま した し、現代 にもあるものです。

東大 の 地震予知研究 協議会が 1991 年 に発行 した 小 冊 子 「 地 震 予 知 は 、 い ま 」 によれば、日本国内 で 7 9 0 件 もの 前 兆 現 象 が 観測 されたと 紹介 して います。

しか し 問題 は、それが 地 震 の 予 知 に 使 えるか どうかです

その ほとんどが、マ グ ニ チ ュ ー ド  6 ~ 7  ク ラ ス の 地震で見られた 現象 で したが、3 0 年間 に 7 9 0 件 も 前兆現象 を 観測 して いたのに、せめて 1 度 く らいは 地 震 予 知 に 成 功 しても 良 いと 思いますが、予 知 は これまで 皆 無 で し た。


( 11-4、ナ マ ズ も 予 知 研 究 に 利 用 )

地震 と 「 な ま ず 」 の 関係 に ついては ( 3-1、地 震 と、 ナ マ ズ の 関 係 ) のところで 述 べ ま した が、実 は 行 政 が ナ マ ズ の 地 震 予 知 研 究 に 予 算 を 投 じて いま した。

東京都 水 産 試 験 場( 葛 飾 区 ) の 江 川 紳 一 郎 研 究 員 によると、昭和 5 3 年 ( 1978 年 ) から 平 成 2 年 (1990 年 ) までの 1 3 年間に 都内 で発生 した震度 3 ( 弱 震 ) 以上の 地 震 8 7 回 の う ち、ナ マ ズ が 地 震 から 10 日 前 までの 間 に 、異常 な 行動 を 起 こ したのは 27 回 であった。

予 知 の 「 的 中 率 ? ? 」 は 3 割 1 分 で、ナ マ ズ が 行動 を 起 こすのは 地 震 の 3 ~ 10 日前 が 多 い ことも 分かった。 ( 東京新聞 92 年 3 月 9 日 付 夕 刊 )

記事 によれば、ナ マ ズ の 地 震 予 知 研 究 に 当 てられた 予 算 は、 総 額 1 億 2 千 万 円 に の ぼ っ た そうで、役 に 立 たないことに 税金 を 支出 し、実 に もったいない 話 で した。


( 11-5、前 兆 現 象 を 追 い 求 め る のは、 後 知

前兆現象

ところで、阪神 ・ 淡路 大震災 の 前兆 を 調査 した本に、「 前 兆 現 象 1 5 1 9 」 があります。内容は 阪神 ・ 淡路 大震災 の 前 に 発生 した 1 ,5 1 9 件 の 前 兆 をまとめたものです。


阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 の 前 兆 現 象 1 5 1 9


異常区分対 象
件 数
割 合(%)異 常 現 象
空 と
大気の
異常
49029地震雲、月の異常、朝焼 け、夕焼 け、晴天の異常、空の状 態、発 光、稲 妻、虹、その他
大地の
変化
18911地鳴 り、地震、群発地震、前震、井戸水、海、河川、湧き水、ラドン の値、その他










人 間
91
頭がふらつく、 異常な暑さ、頭痛が続く、 耳鳴り、体が熱くなる、嫌なことが起こる予感、奇妙な気配、高熱を発する、幼児が大声で泣く、眠りが浅い、頭の深部でうなり音、 めまいと不安定感、寝返りばかり打つ
獣 類
324
19犬 ・ 猫 ・ ねずみ ・ イタチ ・ モグラ ・ ウサギ など
鳥 類
281
16カラス ・ スズメ ・ カモメ ・ ハト ・ キジ ・ インコ など
魚 類
93
ナ マ ズ ・ イカ ・ 金 魚 ・ ボラ ・ ドジョウ ・ コイ など
爬虫類
40
カメ ・ ミミズ ・ ヘビ ・ カエル ・ ナメクジ など
昆虫類
43
ゴキブリ ・ アリ ・ チョウチョ ・ ハチ ・ クモ など
植物の
前兆
異常
11
その他の
前兆
異常
149


集められた いわゆる 地震 の 前兆 と 称 するものは、科 学 に 必 要 な 「 再 現 性 が 欠 落 し て い る 」 もの ばかりなので、データ と しての 利 用 価 値 は 全 く あ りませんで した。 これらの 前兆現象 の 研 究 が 地震予知 に 役立つと 思いますか ?。素 人 の 私 に は 「 溺 れ る 者 は ワ ラ をも つ か む 」 の 諺 ( こ と わ ざ ) と 同様 な 気 がする し、予知 に 役立 つとは 到底 思われません。

なぜなら これまで 前 兆 現 象 について データ を 集 めるだけで、科 学 的 分 析 検 証 がなされずに 来 たからです。な ぜ な ら、分 析 検 証 し た く て も、それが で き な い か ら で す。

より 端 的 に 言えば、地 震 予 知 とは 関 係 が あるか どうか 現 段 階 では 不 明 な 前 兆 と い う 偶 発 的 事 象 か ら、科 学 的 な 規 則 性 を 追 い 求 め て い る の に 過 ぎ ず、幻 想 を 追 って いると しか 思 えません。

さらに言えば、 例えば おか しな 雲 が見えたが、 地 震 が 起きた 後 になって、 あ の と き の 雲 は 「 地 震 の 前 兆 」 だ っ た に 違 いない とするよう な も の で あり、 予 知 で は な く、 後 知 の デ ー タ に 過 ぎ ま せ ん。


[ 12、 東 海 地 震 予 知 の 見 直 し  ]

政 府 の 地 震 予 知 作 業 部 会 は、 2017 年 9 月 2 6 日 に、 地 震 予 知 を 前 提 と し た 防 災 対 策 」 を 4 0 年 ぶ りに 見 直 し、南海 ト ラ フ 沿 い の 全 域 で 、事 前 の避 難 を含めた 防災対策 の 策 定 に 乗 り出 すことにな りま した。

作業部会 の 主査 である 東京大学地震研究所 の 平田 教授 によれば、

40 年 前 は 東 海 地 震 が 起 こる 可 能 性 が 高 い と い う 判 断 だ っ た。し か し 今 と な っ て は、南海 ト ラ フ の ど こ で 地 震 が 起 こ る か 分 か ら な い

南海トラフ

と 述 べ ま し た。換 言 すれば 地 震 の 予 知 が で き な い こ と を、地 震 予 知 学 者 たち が 自 ら 認 めたことになります。なぜなら 前 述 したように 地 震 予 知 の 定 義 と は、 い つ ・ ど こ で ・ ど の 程 度 の 地 震 が 起 き る か を 明 確 に す る ことです。

平田 教授 の 発言 は この 点 について 全 く 触 れられて いませんで した。それどころか 地震 の 危 険 対 象 範 囲 を、東 海 地 域 から 700 キロ メートル も 南 西 地 域 に 拡 大 したので した。しかも 従来 と 同様 に タ イ ム リ ミ ッ ト ( 賞 味 期 限 ? ) を 設 け ず に。

さらに 地 震 に 対 する 避 難 を 開始 する 前 提 と し て 、従 来 の 地 震 の 予 兆 ( 前 兆 )を 捉 え た 場 合 で は な く、南 海 ト ラ フ の どこかで 実 際 に 地 震 が 「 発 生 し た 場 合 」 へ と、 変 更 にな りま した。


( 12-1、終 わ り に )

( 9-1、 ) で前述 した如 く、1977 年 以来 明日にでも 東海地方に 巨 大 地 震 の 発 生 が 懸 念 されて きま したが、こ の 4 0 年間 で地震 の 予 知 は 一 度も できませんで した。

G P S を備えた海底 の 観 測 網 が 整 備 され、 地 震 の 研 究 が 進 むにつれて、 地 震 予 知 は で き な い とする見方 が 逆 に 強 まりま した。

予 知 ができなければ、次 の 段階 である 東 海 地 震 の 警 戒 宣 言 は 出 せ ず 、従って 「 大 震 法 の 前 提 」 自 体 が 崩 れるという、矛 盾 が 露 呈 し た か ら で し た。

日本 の 地 震 学 会 も、これでようや く 地 震 予 知 は で き な い と す る 、 世 界 の 地 震 学 会 の 共 通 認 識  並 み に な っ た と いう べ きであ り、結 構 な こ と で し た。

地 震 予 知 に これまで 投 じた 毎年 100 億円 の 予 算 ( 合 計 1,800 億円 ) を、今後 は 地 震 によっても 破 壊 されない 建 物 などを 研 究 する 地 震 工 学 や 耐 震 工 事 ・ 津 波 対 策 な ど に 充 当 すべきであると 私 は 考 えます。


地震 と 津波 については、東日本大震災 の 直後 に 書 いた 「 天災 と 人災 」 の 項目が、随 筆 集 「 サ ン デ ー 毎 日 の 記 」 の 105 項 にあるので、 こ こ を ク リ ッ ク し て お 読 み 下 さい。


since H 29、Oct. 20

 

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