「海外に行きたいねえ……台湾辺り」
「いいねえ、行きたいねえ」

こんな話をしていたのはもう一昨年だったか。とりあえず悟ったことは「行きたいねえ」とだけ言っていたら、いつまで経っても実現しないということ。無理やりにでも「ここに行くから休みを取れ!」とでも言わない限り、職種がバラバラな私たちの休みが揃うはずないのだ。というわけで、行ける人だけでも行くんだという決意のもと、「台湾旅行企画中。行ける人いますか?」とBDの友達で、私が一緒に旅行したことある人たちに声をかけてみた。最終的になんとかなりそうと返事をくれたのが、町屋さん、国香さん、秋芳さん、らんさん、メイコさん、あらたさん、せのおさん。私を入れて計8人となかなかの大所帯となりました。

「パスポートと休暇さえとって、あと現金だけ持ってきてくれればあとはなんとかするから」と言った手前、ツアーのチェックとか旅行代理店との交渉は私の仕事。頼んだのは私の会社から歩いていけるH.I.S.でした。……確かにね、最初に私はいろいろ無理を言ったよ、「関東と関西で同じツアー使って現地集合にしたい」とか、「行きは成田だけど、帰りは関西空港着にできないか」とか。確かにそれは悪かったさ……でもさ、結局関西組の二人も成田までいったん来てくれる以上、あとは普通のツアー手配と一緒だよね?

「見積もりと請求書の金額が違うんだけど……」と電話したところ、H.I.S.の担当者は
「すいません、どっちも間違ってます」と言いやがりました。<抜けている項目がバラバラだった。全額払い込んだあとに足りないことに気づいたらどうする気だったんだ、Hくん。その前にも復路の飛行機の到着時刻を別便のものを書いてきたりと、私の後輩だったら厳重指導入れるよというミスを連発してくれたので、とにかくこれは自分で書類見ないとどうにもならんという危機感に襲われながら、書類のチェックをする。……本気でホテルに「予約取れてますか」と国際電話入れようかと思ったくらいだ。入れなかったけど。質問メールは途中まで書いたけど。

会社で異動があったりしてバタバタしているうちに、ふと手帳を見て「……あれ?もう来週なの?」と慌て始める。いかん荷造りしなきゃと思いながらトランクを引っ張り出すだけ出してみたのだが、飲み会は入り週末は予定があり、慌しいことこの上ない。もういいよ出発するまでに詰めてあればいいんだよね!いざとなったらパスポートと現金とメイク道具に下着くらいあれば着の身着のままでもなんとかなるよね!という開き直りの心境に達した頃、一緒に行くはずの人たちの日記を見ると「準備してません」「荷物まだできてません」「終わりません」……この様子ならまだだいじょうぶだろう(<そんな下ばかり見ていても!)と思い始め、前日の朝「荷物できた?」と携帯メールしてみて「まだトランクにパスポートとデジカメしか入ってない」という返事に
「私よりふたつ進んでいる…」とちょっと焦る(笑)。

さすがに今晩詰めないと明日の夜には出発だからと、押入れから引っ張り出しただけのトランクをがらがらとおろしてくる。……でかくないですかこれ?どうみても「ちょっとニューヨークまで二週間ほど」というサイズだよ。台湾三泊四日用としてはかなりあり得ないサイズでは………しかし前日夜十時半では今更新しいトランクを買うわけにもいかず、とりあえずがすがすと荷物を詰めてみる。どう詰めてもすかすかなので、思い余ってボックスティッシュまで詰めてみたのだが、どうやっても半分も埋まらない。あーあどうせこれで明日空港で「あねごのトランクでかすぎ!」とか言って笑われるんだよなと溜息をつきながら必要なものを指折り数えてみる。

………で、保険証券は?

十日も前にインターネットで申し込んだはずなのに、まだ証券来てないんだけど!日付が変わってもう出発当日になってます。どういうこと?郵便事故か契約不成立か。慌ててパソコン立ち上げて、カスタマーセンターの電話番号をしらべる(当然朝にならないと電話できない)。ああもういやんなっちゃう。ついでに友達のサイトをまわりはじめ、やっぱり荷物の準備は進んでいないらしいことを確認して安心し、そういや台湾ってだれが赴任してたのかしら♪と
うっかり台湾軍歴代司令官のリストなどを調べはじめ……こうして出発前夜の夜は更けていくのでした。もう三時だよ………。

さて、17日(木)。出発当日です。
お仕事休めないからと午前中まで働いてから成田空港に来るという人もいるなか、朝からお休み。3ヶ月も休んだ上司に私の休暇取得を云々言わせるつもりはないし、主任二人には仕事の〆切引き継いできたし(すいません)、出勤する週明けの机の上の惨状を思って遠い目になりつつ、準備の続き。とりあえず保険のカスタマーセンターに電話するところから。ちゃんと保険は成立しているらしいので、急いで保険内容のメールを送るので、それをプリントアウトしてもっていってほしいとのこと。…・・・多分「出発当日に言ってくんな」と向こうでは思っていることでしょう。ゴメンねえ、すっかり忘れてたんだよ。

中身すかすかなくせに無駄に重いトランクをごろごろと引きずりながら、駅へと向かう。出発カウンターでの待ち合わせは17時50分なのですが、関西組の町屋さんとあらたさんが新幹線でこちらに来るので、二人を東京駅まで迎えに行くのです。ついでに東京駅を通るらんさんにも声をかけて待ち合わせ。がらがらごろごろとトランクを引っ張る。うーんやっぱりこのトランクでかかったか。多分これ、一人くらいなら入るんじゃ……運賃浮いたんじゃ、とかしょもないことを考えながら東京駅でぽつねんと待つ。いいもん、私はドラ●もんを目指すんだ。何人かで旅行に行くとたいてい一人はいる、本当にそんなものが必要なのか!と思うようなものまで持っている人。あれが私。今回はちゃんと爪切りの中にあるし。

トランクの中から爪切り………(一人でひっそりとへこんでみる。いたねそんな人が。トランク2つも持ってきて爪切り入れてきた男が……<敬ちゃん)

ひそかに一人落ち込んでいる間に、らんさんが、続いて新幹線組の町屋さんとあらたさんがやってきた。

四人揃って合流してみたら、トランクを新しく買ったらんさんはともかく、残りの三人は「昔のを引っ張り出してきた」「先輩が貸してくれたのが大きかった」とほぼ大差ない大きさ。なんだよかった、これで一人で巨大なトランク引きずらなくて済むよ(というか、一人でバカにされなくて済む)。

「新幹線の中でね、忘れものしたら何でもド●エもんが持ってるからって言ったらね、あらたさんが『はるかさん、青い気ぐるみとか着てきたりしないですかねー』って」
「………着ねぇよ」
「えー、着はりませんかぁ?そしたら私、効果音しますのに〜」
「いらんわ、そんな効果音!」
「なんかあると、あねごが『ぽけっとてぃっしゅぅ〜』ってバッグから取り出すんだよ」
「そこで私が『♪ちゃらりらっらら〜』って効果音をするんですね!」
「………もーあらたちゃんには、なんか忘れ物してても何も貸してやらん」
「えええーどうしてですかー!?」
「どーしてもじゃ」


そんなアホ話をしながら、からからと移動。しかしでかすぎるトランクを抱えて移動するのはなかなか大変。特急料金という言葉を嫌う私が成田まで行ける快速電車の時間にあうように待ち合わせをセッティングした為、総武線快速の地下4階まで降りなければなりません。なんとかエスカレーターとエレベーターを乗り継いでホームに到着。まだ時間当分あるね。ところで暑いね、今日。すごく蒸すし。のど渇いたなあ。

「ねーねー社長(=町屋さんのこと)、あたしちょっと飲むもの買ってきていい?」
「あねご、それは何とかが何%入ってますとか書いてある飲み物じゃないの?」
「え、と、レモン果汁とか入ってるやつ」
「なんかもういっこくらい%が書いてない?」
「え、炭酸とかのことかしらぁ?」


社長の激しい追及(というかツッコミ)を逃れ、上の階にあがってコンビニで買い物して戻る。

「あねごやっぱり買っとるし!それレモン果汁2%くらいじゃないの?」
「そんなことないもん、28%もレモン入っとるもん!」
「んじゃなんねこっちの金色の缶は」
「えっと……麦果汁かな……」
「麦は果汁とは言わないだろ、あねご」
「むぎじる?なんかイヤな響きだなー」
「それで麦汁が何%入ってるのそれは」
「えーっと……95%くらいかな・・・(<アルコール分5%だから)」


買ってはみたものの、旅行仕様のボックス席ではなかった為、私が車内で缶を開けられたのは1時間後、千葉駅を遥かに過ぎて車内がガラガラになった頃でした。ぬるくなってたよ……(哀愁)。

空港に着いてしばらく時間を潰し、喫茶店でケーキやココアを頼む人を尻目に一人赤ワインなど飲みつつ、集合時刻を待つ。フライトは19:50なのだけど、2時間前にはカウンター前に集合しなければいけないので。ほぼ定刻どおりに全員が揃い、チケットをカウンターで受け取る。……で。なーんでこれ、席がこんなにバラバラなのかなあ?「4人様、4人様で伺っておりましたので・・・」というカウンターのお姉さんに「で、これはどの時点での連絡ミスなのかしら、ツアー会社なの?その前の旅行代理店?」と思わず詰め寄ってしまい、さらに上席らしい女性が出てくることに。別に連絡会社の問題ではなく、ディスカウントチケットの為、あまり席はまとめて予約できないのだという説明を受けて引き下がる。……またHくんの不手際のせいかと思ったよ。あやうくまたH.I.S.に電話かけちゃうところだったわ。

8人あまりにバラバラなサイズの荷物をカウンターに預け(<「とても同じ国に行くとは思えない」と言われる。トランク大が4人ほどいたので安心。その反面、スポーツバッグの人が2人いるし)、出国手続きに向かう。

「ところではるかさん、台湾って時差どれくらい?」
「………さあ……?」


のっけから不安な返事をしている幹事がここにおります。でも北京で1時間だったから、多分そんなものだと思う……多分。<ちゃんと調べろよ幹事。

無事に出国手続きを終え、免税店周辺で時間を潰しつつ、搭乗。今回使ったのはダイナスティーツアーという、チャイナエアラインの持っている旅行会社のものなので、当然飛行機はチャイナエアライン。フライトアテンダントの制服は、紫のひざ丈のチャイナ服の上にやや濃い目の同系統色のベストを重ねたデザインで、国内線のいかにもな紺の制服を見慣れたあとだとなかなかにかわいい。一人日本人がいるみたいだけど、あとは中国系の女性ばかり。ただカタコトの日本語は通じるので、特に困ることはない。機内放送を聞いていると、中国語が2パターンと英語、日本語で繰り返される。多分これは北京語(中国の公用語)と台湾語なのかな。サービスはどうかなと思ったけど、なかなか悪くないです。最初にくれるおしぼりは紙だけど、巻いたものをちゃんとひとつずつ手渡してくれるし、飲み物も白/赤ワイン、水割りにビールと最初にアルコールが来たあとに、ノンアルコールというように、こまめに来てくれるし。機内食も思ったよりはよかった。前に乗った国内線のときは、トレイ全体にアルミがかかってて、ほんとにお弁当仕様だったけど(しかも蕎麦まで入ってた時があって、どこだかの欧米の人が固まった蕎麦を慣れない手付きで箸使って苦闘しながら食べてた)、これはアルミがかかっているのはメインのポークかフィッシュの選択するトレイだけ。ひとつずつパンを乗せて手渡してくれるし。手間かかるかもしれないけど、受け取る方としては、この一手間がレトルト気分を下げてくれるので、ちょっと嬉しい。デザートのほかにフルーツ付いてるし。機内食としてはまあまあじゃない?悪くないよね、と秋芳さんと頷きあう。

約三時間のフライトを終えて、台湾の中正国際空港に到着。中正ってのは、蒋介石の別名なんだそうです。荷物を無事受け取って到着ロビーに向かう。今日は現地の係員の人がホテルまで送ってくれるはずなんだけど……あ、いた。私の名前のボードを持った男の人が待っててくれています。まだ若そうな人。こっちこっちと誘導してくれるので、トランクを引きずって空港の外に一歩出て。

・・・・・・・・・暑。

飛行機と空港の中が、冷房かけすぎというくらいに冷えていたので、いきなり襲ってきたこの湿度と熱波は結構ダメージ大。台湾は緯度が日本より高いので、暑いのと湿度が高いってのは聞いていたんだけど……やられた。

小型のマイクロバスに乗るのは、私たち8人だけ。訊いてみたら、明日の午前中の半日観光も、私たち8人だけで動くのだそうです。やった♪知らない人たちと動く観光って疲れるしね。私は内容で選んでH.I.S.が扱っているダイナスティーのツアーに決めたけど、候補の中にはH.I.S.が独自でやっているCiaoというツアーもあって、「あっちで今日到着した人は150人くらいいるそうです。いっぱいね」とガイドの楊(ヤン)さんが言う。結果として、私たちの旅は天気にも恵まれたけど、なによりガイドさんに恵まれました。埼玉県で日本語の勉強をしていたという楊さんは、子年と言っていたので、私よりちょっと年上。親切だし、説明も面白かったし、わがままの多い私たちによくつきあってくれました。中国の人が話す日本語って、語尾がやわらかくて好き。帰りの空港で会った別のツアーのガイドさんはどうみても七十歳以上で、楊さんも「若いガイドさん、あまり多くない」と言ってたけど、添乗員付の観光はほんとにそのガイドの質と相性で決まるので、そういう意味で本当にラッキーだったなと思います。

小型のマイクロバスに8人しかいないので、ゆったり座れてラクチン。
車に乗って楊さんが自己紹介したあと、「みなさんにきくことがあります。たいちょうは・・・・・・」というので「体調のこと?」と思っていると(台湾はSARSが流行したせいで、体調の自己チェックシートを記入して入国時に出さないといけない。日本語版をくれたのだが、「十天以内に」という辺り、最後の詰めが甘い<中国語で「天」は「日」の意)、
「ええと……リーダー?」そうですか、「隊長」のことだったのか。はいはい、私ね。出発前には町屋さんが関西の友達に「今、元締が酒買いに行った」とメールしてたそうですが、ついに隊長になったようです。お返しに「じゃ、副隊長は?」というので「町屋(仮名)さんです」と指名しておく。

マイクロバスは台北市内に入り、ホテルに向かって走る。ホテルは3つ候補があって選べるんだけど、私が選んだのは『帝后大飯店(エンプレス・ホテル)』というところ。普通のビジネスホテルだけど、他のふたつは「夜は出歩かない方がいい」とか「昼間でもスリに注意」とかガイドに書いてある地区で、これが一番治安が良さそうな地域かなと選んでみた。ちょっと設備が古めだけど、日本語通じるし、周囲にコンビニたくさんあるし、悪くないです。ホテルはMRT(台湾の地下鉄)の「民権西路」と「圓山」の駅の中間くらい。どちらから歩いても約10分。周囲は住宅が多く、あとは結婚写真を撮る店が多い。台湾はドレスアップ+メイクをして写真を撮れるという変身写真がひとつの名物にもなっていて、この辺りはそういう店が多いのでした。ちなみに同行者は誰もそんな写真は撮っておりません(笑)。

ホテルに向かう途中、楊さんが「この中にシングルの人はいますか?」と訊くので
「全員シングルです」と答えると、「え」と一瞬絶句された(その前に年齢の話したところだったから余計に……)。彼がそういう話題をふったのは、ちょうど私たちのホテルがそういう地域にあるので、三ヶ月前に結婚した時の写真を見せてくれようとしたから。十万円くらいで百枚くらいのアルバムがサイズを変えていくつも作れるので、海外からわざわざ撮りに来る人もいるそうですが、これがまた大変らしい。打ち合わせだけで1日、撮影するのに1日、撮ったうちから使う写真を選ぶのに1日。撮影には午前9時から午後9時くらいまでかかるそうです。そりゃ大変だ。しかし「これ、わたしと奥さん」と見せてくれた写真は「すごーい、きれーい」「奥さん美人ですねー」と車内から歓声が上がるくらいのスナップ写真。「隣にいる人もハンサムでしょ」「はいはい、ハンサムです」と言ってたけど、確かに普段の楊さんからはかなりかけ離れた印象になってて、やる気があれば、これは撮る価値あるかも。

「しかしこれ、別れる時に見たら痛いですよね」
「むしろ、これ撮ったあとに太ったりするともっと痛いんじゃ……」


でも二枚しか見せてもらえなかったので、他のも見たかったな、アルバムごと。頼めばもっと持ってきてくれたのかしら。残念。

ホテルの部屋割りは、私が決めて、町屋さん+国香さん、秋芳さん+らんさん、メイコさん+あらたさん、せのおさん+私。空港に着いたときも「本名で書いてあると誰が誰だかわかんない」と皆が言ってて、そういや私は全員本名わかるけど(荷物のやりとりするからね)、あんまり会ったことない人もいるからなあと言うわけでこんな感じに。
結局、時差の正解は「1時間」でした。日本より1時間遅い。ホテルに着いたのが日本時間で12時近かったので、隣の便利商店(コンビニ。こっちではセブンイレブンとファミリーマート(「全家商店」)をよく見かける)をちょっと覗いて簡単にお買い物して、今日はおしまい。


明日は半日観光です。