ニ セ 物 ・ 本 物 ( 続 き )



[ 9 : 貨 幣 の 誕 生 と 、贋 金 ( に せ が ね ) ]

歴史的に見ると 貨 幣 は、 貝 殻 ・ 布 ・ 米 ・ 絹 などの 実 物 貨 幣 ( 物 品 貨 幣 と も い う ) に 始 ま り、その後  金 ・ 銀 が 「 本 来 的 な 貨 幣 」 と して用 いらるようにな りま した。

貝貨

中国の 古 代 王 朝 の ( い ん 、 紀元前 1,600年 ~ 紀元前 1,046 年 ) の 時代 には、 宝 貝 ( た か ら が い、別名 子 安 貝、こ や す が い ) が 、貨 幣 と して使用されま した。

宝 貝 は 暖流に洗われる 沖 縄 にも生息 していますが、東 支 那 海 や 南 支 那 海 の 中 国 沿 岸 では 採取 できませんで した。東支那海 は水温が低 く、台湾近海や広東省沿岸では、揚子江や他の 河川 から流れ出る 河水 のために海が濁 り、宝 貝 は生息 していないからです。

宝 貝 は 沖縄 ・ ベトナム ・ モ ル デ ィ ブ ( 現 ・ Republic of Maldives、イ ン ド と スリランカ の 南西 に 位置 する イ ン ド 洋にある 島 国 ) などで し か 採 れませんで した。宝 貝 ( 子 安 貝 ) の 希 少 性 と 女 性 器 を示すような 形状 などから 宝 物 と して 珍 重 され、丈夫 で 保存性 に優れている利点もありま した。

貨 幣 と して使われた 証 拠 に、西 周 時代 ( 紀元前 1,100 年頃 ~ 紀元前 771 年 ) の 金 文 ( き ん ぶ ん 、青銅器 の 表面 に 鋳 込 まれ、あるいは 刻 まれた 文 字 ) にも 宝 貝 ( 子 安 貝 ) が しば しば 登場 しま した。

その後、 鋳 貨 ( ち ゅ う か、金属を溶か して 鋳 型 に 注ぎ 造 る 貨 幣 ) や 紙の 紙 幣 なども 通 貨 と して 使用 されるようになりま した。


( 9-1、世 界 初 の 紙 幣 )

中国 の 史 書 ( 後 漢 書、ご か ん じ ょ )に残された記録によれば、紀元 105 年 に 「 蔡 倫 」 ( さ い り ん ) が 樹 皮 や 麻 の ボ ロ から 初めて 紙 を 作 り 、後漢 の 第 4 代 皇帝 の 和 帝 に献 上 したという記述があります。

「 蔡 倫 の 紙 」 は 軽 く かさばらないため、記録用紙 と して、従来の 木 簡 ( もっ か ん、墨で文字を書 く ために使われた、短冊状の 細長 い 木の板 ) や 竹 簡 ( ち く か ん、竹を細い短冊形に削 り 火にあぶって 油抜 き し文字を書 いた ) ・ 絹 布 ( け ん ぷ ) などに代わって 普及 しま したが、紙 幣 が作られるまでにはそれから 千年 近くの 年月 が必要で した。

世界で 初 の 紙 幣 が 発行 されたのは 宋 代 ( 紀元 960 年 ~ 1279 年 ) の 初 期 ( 990 年 頃 ) に、益 州 ( えき しゅう、現在の 四 川 省 ) の 成 都 ( せいと、現 ・ 四 川 省 ・ 省 都、標 高 5 0 0 m ) においてで した。

益 州 は 周囲 を急 峻 な 山に囲まれた 盆地 であり、当時 の 銭 貨 の 原料となる 銅 を 産 出 せず、昔から 「 鉄 銭 」 を 使 用 してきま した。しか し 「 銅 銭 」 に比べて 価値 の 低い 「 鉄 銭 」 は 高 額の取引には 莫大 な 量の 「 鉄 銭 」 が必要であり、支払い /収 受 に 際 しての 「 鉄 銭 」 の 取り扱いや 移 動 には 大変不便で した。

そこで 成 都 の 豪 商 が 発行元 とな り、  交 子 ( こ う し ) という 私 札 ( し さ つ、私 的 に作られた 紙 幣 ) を 発 行 しま した。この紙幣は 3 年間の 有効期限 を持ち、期限満了後は 新 しいものと交換する仕組みで した。


( 9-2、日 本 最 古 の 紙 幣 )

紙 幣と して日本で 最初 に発行されたのは、 山 田 羽 書 ( や ま だ は が き ) であるといわれています。書 」 などと いうと 「 葉 書 」 と間違えそうですが、「 羽 書 」 の 名前 の 由来 は この 紙 幣 が、羽 が 生えたように 円滑 に 流 通 することを 願って、名付けられた といわれています。

山田羽書

「 羽 書 」は 1,600 年 頃の 伊勢国 において 民 間 が 発行 した 紙 幣 の 一 種 であり、慶長 8 年 ( 1603 年 ) に 幕府 の 朱 印 状 によって 伊 勢 の 山 田 三 方 会 合 ( や ま だ さ ん ぼ う か い ご う 、室町時代 から 存在 した 自 治 行 政 組 織 ) が、地域の 自治機関 と して 公 認 されま した。

それによ り これまで 未 公 認 でおこなわれていた 「 羽 書 」 の 発 行 が幕府により 公認 され、監督 の 権限を付与されま した。 山 田 三 方 会 合 で 発行れた 1610 年製 の「 羽 書 」 が、 現存 する 「 日 本 最 古 の 紙 幣 」 と いわれています。

  山 田 羽 書 が発行された理由については、伊勢国は昔から 伊勢商人 の 拠点 と して知られ、特に伊勢神宮の門前町であった 伊 勢 ( 宇 治 ) 山 田 は日本各地に 営業網 を持つ、 伊 勢 御 師 ( い せ お ん し、伊勢神宮 の 広報 ・ 観光案内 ・ 旅行代理店 兼 宿泊所経営 ) の 拠点 でもありま した。

そのつながりを利用 して 一 種の 為替 を 発行 して 貨幣 の代用 と して各地に流通させたのが 山 田 羽 書 ( や ま だ は が き ) の 原形 とされます。

山 田 羽 書 は 江戸幕府発行 の 丁 銀 ( ち ょ う ぎ ん、棒 状 の 銀 塊 の 意 味 ) との 引 き 換 え を 約束 した 兌 換 ( だ か ん ) 性 を有 し、銀 1 匁 ( も ん め )・ 5 分 ( ぶ ) ・ 3 分 ・ 2 分の 四種類 が出されていま した。

しか し 寛 文 8 年 ( 1668 年 ) 以後は、小判 との 兌 換 を 前提 とする 形式 に 改 められ、丁 銀 ( ち ょ う ぎ ん ) と同様に 64 匁 ( も ん め ) の 羽 書 ( は が き ) と 金 1 両の引き換えが行われま した。


( 9-3、世 界 初 の 銀 行 券 )

初銀行券

ヨーロッパ の 紙幣 の 歴史は新 しく、民間 の 銀行 が 発行 した 金 銀 の 「 預 り 証 」 である 「 金 匠 手 形 」 ( き ん し ょ う て が た、G o l d s m i t h' s - n o t e ) が 通 貨 と して流通 していま したが、国家による 承認を受けたものと しては、1661 年に ス ウ ェ ー デ ン の 民間銀行 ス ト ッ ク ホ ル ム 銀行 が発行 したのが、銀行券 と しては最 初 のもので した。左は ス ト ッ ク ホ ル ム 銀行が1666 年 に 発行 の、50 ダーレル 券 です。


( 9-4、貨 幣 と 偽 金 ( に せ が ね ) の イ タ チ ご っ こ )

 古 今 東 西 を問わず世の中に 貨 幣 が 誕 生 すると、やがて 「 偽 造 貨 幣 」 つまり 「 偽 金 ( に せ が ね )」 が作られるようにな りま した。

中国では、 前 漢 の 時 代 ( 紀元 前 202 ~ 紀元 後 8 年 ) から、 すでに 貨 幣 の 偽 造 が行われて いま した。

日本でも 708 年に発行された 日本最初 の 流 通 貨 幣 といわれる 和 同 開 珎 ( わ ど う か い ち ん )、が 発行されると、すぐに安価な 「 鉛 」 を鋳型 ( い が た ) に流 して造った 和 同 開 珎 の 「 贋 金 」 ( ニ セ ガ ネ ) が 多数 出回 るようになりま した。

当時は 貨 幣 制 度 が 誕 生 したばかりで 人々が 貨 幣 に慣れていなかったので、偽造 された 鉛 製 の 和 同 開 珎 は、簡単に 流通経路 の中にまぎれ込んでいき、その結果 雁 金 ( ニ セ ガ ネ ) 造りの 悪 人は 大 儲 け したといわれています。

ちなみに 初 期 の 和 同 開 珎 の 場合は、 銅 を 約 9 0 % 含 有 し、残りは 鉛 や 錫 ( ス ズ ) で したが、現代 の 10 円 硬 貨 の 場合は、銅 が 9 5 % で 残りは 亜鉛 と 錫です。

古和同

左 の 写真 は 和 同 開 珎 の 素 焼 き の 鋳 型 ( い が た ) で、ここに高価 な 銅 ではなく、安 価 な 鉛 を主成分に したものを流 し込んで 偽 金 ( に せ が ね ) つまり、私 鋳 銭 ( し ち ゅ う せ ん ) を作 りま した。

発掘調査 でも 平 城 京 ( 奈 良 の 都 ) の 内側 で 和 同 開 珎 の 鋳 型 が見つかり、ヤ マ ト 政 権 の 目 と 鼻 の 先で、 私 鋳 銭 ( 偽 金、に せ が ね ) が 造られていたことが 確 かめられています。偽 金 の 横 行 で 和 同 開 珎 の 価 値 はたちまち 下 落 したので した。

偽金 造りは、政府の予定 した利益の横取りにほかなりません。その取り締りには 死罪 を含む 厳 罰 をもってのぞみま した。しか し、偽 金 造 りを根絶や しにできなかったのが実態だったようです。

この問題を 一挙に解決する手段と して考え出されたのが、新 しい 銭 貨 の 発行で した。 万 年 通 宝 という新 しい銭貨を造り、私鋳銭 の 入り交 じった 和同開珎 と 区別 しようと しま した。

しか し、新銭の 万 年 通 宝 ( 銅の含有率 7 8 % ) も 和 同 開 珎 と 同 じ 問 題、つまり 偽 金 造 ( に せ が ね づ く ) りによる 偽 造 貨 幣  がすぐに現れま した。

これ以降、ヤ マ ト 朝廷は 10 ~ 20 年ごとに 新銭 の 発行 という 対処 を、繰り返すことになりま した。つまり、私 鋳 銭 の 横 行 と 新 銭 の 発 行 が、まるで いたち ごっご のように 行 われ、平安時代の最後に 発行 された 乾 元 大 宝 ( か ん げ ん た い ほ う、958 年 に 鋳 造 ) にいたるまで 12 種類もの 銭貨 が発行されま した。

皇 朝 十 二 銭 の最後 に 鋳造 された 乾 元 大 宝 は、「 銅 銭 」 ではなく 「 鉛 銭 」 であると言われるほど 鉛 の含有量が高い 粗 悪 な 品 質 のものが多 く、価値の低下 した 銭貨 は、流通 と 交易 の 現場 から 忌避 ( き ひ ) されるようになり、宋銭 が 大量 に 流入 する 1 2 世紀後半まで、日本国内 での 銭 貨 の流通は限定されたものとなりま した。

貨 幣 の 発行者である 大和朝廷 は 「 皇 朝 十 二 銭 」 ( こ う ち ょ う じ ゅ う に せ ん ) と呼ばれる 十 二 種 類 の貨 幣を次々に発行 して、銅の含有量の少ない 粗 悪 な 銅 銭 を作り、 差 額 で 収益を得て律令国家の財政を立て直そう と したも の の、財政面から次第に弱体化 していきま した。

皇 朝 十 二 銭 ( 708 ~ 958 年 ) 以 後 、大和朝廷は貨幣を発行することはなくなり、一方で貨幣経済の発達により社会からは 一定の貨幣供給量が求められることとなり、不足する貨幣を中国から持ち込まれた 渡 来 銭 ( と ら い せ ん、内訳は 宋 銭 7 7 %、明( み ん ) 銭 8.6 %、唐 銭 7.6 % など ) で補う以外に選択肢はありませんで した。

渡来銭 を流通させてもなお 貨幣供給量 は不足 し、私 鋳 銭 の 鋳造 は日本全国でごく一般的に行われま した。江戸幕府による三貨体制の確立にいたって、銭貨の 私鋳 はすべて 偽 金 ( に せ が ね ) と して禁 止 されま した。


[ 10 : 偽 札 づ く り ]

偽 札 とは 紙 幣 や 銀 行 券 を 発行 する 権 限 の 無 い 者 が、行使の目的をもって 紙 幣 や 銀行券 を 偽 造 ・ 変 造 したものを い います。

報道によれば 平成 2 5 年 10 月 22 日、家庭用 プ リ ン ター で 1 万円札を偽造 し、生活費 と して 父親 に渡 していたと して、警 察 は 偽 造 通 貨 行 使 の疑 いで、名古屋市 ・ 瑞穂区 に住む、無職 の男 ( 47 ) を 逮捕 しま した。 容疑 は 9 月 7 日 ごろ、父 親 ( 81 ) が住む 瑞穂区の自宅で、父親に偽造 1 万円札 6 枚を 生活費 と して渡 し、母 親 が スーパー で支払 いに使おうと して発覚 しま した。

警察によると 容疑者は プ リ ン ター に 1 万円札を 並 べ て コ ピ ー し て 切り抜き、 ホ ロ グ ラ ム 部分 は ア ル ミ ホ イ ル を 加工 して似せていたとのことで した。刑法の規定によれば、


刑 法 第 1 6 章 通 貨 偽 造 ノ 罪

[ 通 貨 偽 造 ・ 行 使 ]

第 1 4 8 条 (1)、行使 の 目的で、通用する 貨 幣、紙 幣 又 は 銀 行 券 を 偽 造 し、又は 変 造 し た 者 は、 無 期 又 は 3 年 以 上 の 懲 役 に 処 す る。

(2)、偽 造 又 は 変 造 の 貨 幣、紙 幣 又 は 銀 行 券 を 行 使 し、 又 は 行 使 の 目 的 で 人 に 交 付 し 、若 し く は 輸 入 し た 者 も 、前項 と 同 様 と す る。

とありま した。


( 10-1、スーパー K )

1 9 8 0 年代 末 から 1 9 9 0 年代 後半 にかけて 「 スー パ ー K 」 ( 別 名 スーパー ノート、 n o t e とは 紙 幣 の意味 ) と 呼 ばれる 偽 の 米 1 0 0 ド ル 紙 幣 が 世界各国に出回 り、日本でも 4 0 0 枚 以 上 の 偽 札 が発見されま した。

日本では 一 般に 「 スー パ ー 」 と 呼ばれま したが、偽造の 本拠地 が 北朝鮮 であると 推定 されたため、 K O R E A 「 K 」 の 文 字 を当てたといわれています。

米100ドル

2 0 0 6 年 1 0 月の報道によれば、米財務省は 2 5 日、偽 ド ル 札 に関する報告書を議会に提出 した。北朝鮮の 「 スーパー ノート 」 と呼ばれる 偽 1 0 0 ド ル 札 につ いて、過去 1 6 年間で約 2 , 2 0 0 万 ド ル ( 約 2 5 億 円 ) が 市中 に 流通 したと明らかに した。

一方で、偽 札 捜 査 を 担 当 する シーク レット サービス ( 注 参照 ) は 約 5 , 0 0 0 万 ド ル ( 5 7 億 円 ) の 「 ス ー パ ー ノ ー ト 」 を 押収 したと している。 

報告書は、偽札の 脅 威 に対応 するうえで、 「 言 及 す る に 値 す る 国 」 と して、 コ ロ ン ビ ア と 北 朝 鮮 の 偽 札 製 造 を 挙 げ た

[ 注 : シーク レット サービス ]

財務省の管轄と して発足 した 秘 密 検 察 局、秘 密 捜 査 局 のことであり、 紙 幣 や 国 債 などの 偽 造 などを初めと した 経済犯罪 を取り締まるところ。大統領 や 国 賓 に対する 警 護 部 門 は、あ く までも その 一 部である。

シーク レット サービス は報告書の中で 北朝鮮の 「 スーパー ノート 」 については、米国の造幣当局と同 じように 活 版 印 刷 や 特殊な用紙を使うなど、「 高い品質 」 の 紙幣であると指摘 した。

一説によれば、北朝鮮が製造 しているといわれる 精巧 な 偽 の 米 1 0 0 ド ル 札、「 スーパー K 」 は、旧 ソ 連 国 家 保 安 委 員 会 ( K G B ) が 第 二次大戦後、米国の造幣局から盗んだ 印刷機 で 製造 されているら しいことがわかりま した。 元 K G B 関係者によれば 、K G B は冷戦期、米経済を混乱させるため、大量の 偽 ド ル 紙幣 をばらま く ことを計画 しま した。

造幣局に勤める米共産党員を利用 して印刷機を 極秘 に入手 し、古い機械を 最新紙幣 に 対応 できるようにするため 更新 を続けま したが、ソ連時代は 偽札 はあまり製造されませんで した。

1 9 8 0 年代後半、冷戦が終わると 偽 札 製 造 機 は必要な くなり、K G B は北朝鮮の要請に応 じて供与 したら しい。供与協定 が モスクワ の K G B 本部で秘密裏に調印され、印刷機が鉄道で北朝鮮に送られま した。北朝鮮は 平壌郊外 の 秘密施設に設置 し、1 0 0 ド ル 札 の 偽造 を行なったとする 説 があります。


[ 11 : 日 本 の 紙 幣 に 対 す る 信 頼 性 ]

日本のように 偽 造 紙 幣 がめったに無 い 治 安 の 良 い 国では、買 い 物を して受け取った 紙 幣 や、 銀 行 ・ コ ン ビ ニ などの A T M から出てきた 紙幣 が 本 物 か 偽 物 かを いち いち 確認 するという 社 会 的 習 慣 はありません し、スーパー や 商 店 の レ ジ には、偽 札 を 鑑 別 するための 紙 幣 鑑 別 機 や、 細 工 を見破 るための 「 紫 外 線 ラ イ ト 」 もありません。

警察庁 によると お 札の 流通量 に対する 偽札 の割合 でみると、日本の 偽 札 は、世界的に見ても 極 め て 少 な い ことがわかります。その理由は前述 した 治 安 が 良 い ことに加え、紙 幣 に 高 度 な 偽 造 防 止 技 術 が い く つも 施 されていて、偽造 しに く いことなどが挙げられます。


( 11-1、紙 幣 偽 造 防 止 技 術 )

日本政府 は 平成 1 6 年 ( 2 0 0 4 年 ) 1 1 月 に、1 万円 ・ 5 , 0 0 0 円 ・ 1 , 0 0 0 円 札の 新 札 を発行 しま したが、偽造 を 防 ぐ ための 最 先 端 の 技術 が投入されま した。その 目玉 となったのが、「 ホ ロ グ ラ ム 」 と 「 す き 入 れ バ ー 」 で、日銀が発行する紙幣と しては 初の試み となりま した。偽造防止の 新 技 術 は 以下 のとおりです。( 1 万円札について )

  1. ホ ロ グ ラ ム ( H o l o g r a m )の使用。三 次 元 画 像 を 記録 する 写 真 の 製 造 技 術 ( ホログラフィー )により作られた 図柄 のことであり、紙幣の左下にある。

    ホログラム

    右 の 万 円 札 の 赤 丸 で 囲 ま れ た ホ ロ グ ラ ム は、光の当たり方や見る角度によって 、日 銀 の マーク ・ 1 0 0 0 0 の 数字 ・ 約 1 2 箇所にある 桜 の 花 や、花びら ・ 5 箇 所 以 上 ある、N I P P O N - G I N K O  の 文字 などの図柄 の 色 や 模 様 が 変 化 して 現 れる。拡 大 鏡 で 万 円 札 の ホ ロ グ ラ ム を見れば、よ く 観 察 で き る。

  2. す き 入 れ バ ー ・ パ タ ー ン 。光に透 ( す ) かすと、すき 入 れられた 三 本 の 縦 縞 ( た て じ ま ) が見える。従来の 「 す か し 」 よりも、パソコン や カラー ・ コピー機 等で、再 現 しに く い。

    すき入れ

    1 万円札 の場合、図の左側 は光に透 ( す ) かさない場合で、透 ( す ) かすと福沢諭吉の向かって右の 肩 から上方に長さ 約 1 6 ミ リ、幅 約 2 ミ リ の 「 す か し 入 り の バ ー 」 三 本 が見える。

     
  3. 潜 像 模 様 、お札を 傾 けると、表面左下に 「10000」 の文字が、裏 面 右 上 に 「 N I P P O N 」 の 文字 が浮かび上がる。

  4. パール インキ 、お札を 傾 けると、左右の 余 白 部 に ピ ン ク 色を帯びた パール 光 沢 のある 半透明 な 模様 が 浮かび上がる。

  5. マ イ ク ロ 文 字 、ホ ロ グ ラ ム の外側、上 下 に 「 N I P P O N ・ G I N K O 」 その他に 、 福 沢 諭 吉 ・ 国 立 印 刷 局 製 造 ・ などの小 さな 文字 が、券面に 印刷 されている。

  6. 特 殊 発 光 イ ン キ 、表面 の 「 日 本 銀 行 総 裁 印 」 に紫外線を当てると オ レ ン ジ 色に光るほか、地紋の 一部が黄緑色に発光する。

  7. 深 凹 版 印 刷 、紙幣 の 図柄は インキ が表面に盛り上がるように印刷される。

  8. 識 別 マ ー ク ( 深 凹 版 印 刷 )、視力障害者 が 指で触って 識 別 可 能 なように、従来の 「 す か し 」 に代えて 一 層 ざらつきのある、「 深 凹 版 印 刷 」 を導 入 した。


( 11-2、中 国 に お け る 偽 札 )

  1. 在 香港 の 日 本 総 領 事 から、中国人民 元 ( 1 0 0 元 札、約 1 , 6 0 0 円 に 相 当 ) の 偽 札 に関する 注 意 喚 起 の 文書 ( p d f ) が下記に出ています。

    http://www.hk.emb-japan.go.jp/jp/docs/cndollars.pdf


  2. 2 0 1 5 年 4 月 3 日付 の 日 経 ビ ジ ネ ス ・ オ ン ラ イ ン  の 記事 によれば、中国における偽札の 増加率 は 2 5 % を超えていると報 じていま した。


  3. 中 国 に 蔓 延 ( ま ん え ん ) す る、 ニ セ 札 の 実 態 ( 動 画 )。

    によれば、偽 札の 流通 は 約 2 0 % であると しています。


( 11-3、中 国 を 除 く、主 要 国 紙 幣 の 偽 札 発 生 率 )

偽札発行割合

図 は 日本 の 偽 札 発 生 率 を 「 1 」 と した場合の、各 国 紙 幣 の 流 通 量 に 対 す る 偽 札 発 生 の 割 合 です 。最 悪 なのは 英国 の 「 ポ ン ド 紙 幣 」 ( P o u n d -s t e r l i n g、ポ ン ド  ス タ ー リ ン グ ) で、日本 の 1 6 1 9 倍 です

データ は 「 ポンド 」 が イングランド 銀行 ( Bank of England ) の H P。「 ユ ー ロ 」 が 欧州 中央銀行 ( European Central Bank ) の H P。「 日本円 」 は 警察庁 H P 及 び、日本銀行 の H P の資料 から 算 出 ( いずれも 2012 年 の データ )。「U S ド ル」 については、米財務省 H P の資料 ( 2 0 0 6 年 ) から 引 用。

英国における 偽 造 紙 幣 が 多 過 ぎ る と 疑 問 を 抱 く 方 は 、論より証 拠、下記 にある イングランド 銀行 の H P で、 中程 にある Number and Notional ( 概 念 的 な ) Value of Counterfeits Removed from Circulation の 表 ( 千 枚 以下は 四 捨 五 入 ) から、 押 収 した 偽 造 紙 幣 の 枚 数 を 確 認  して下さい。

英 国 における 偽 札 の 横 行


上 記 の T O T A L の 下 欄 の 数 字 を 再 掲 すると、市 場 で 発 見 され 回 収 さ れ た 「 ポ ン ド 偽 造 紙 幣 の 枚 数 」 は、

  1. 2016 年-- 347,000 枚

  2. 2015 年-- 249,000

  3. 2014 年-- 440,000

  4. 2013 年-- 703,000

  5. 2012 年-- 746,000

です。次 の 項目で、日本 における 円 の 偽 造 紙 幣 枚 数 を示 すので、上 記 の 数 字 や、2016 年 の ポ ン ド の 偽 札 3 4 万 7 千 枚 の 値 を 覚 えて いて下さい。

そういう 事情 からで しょうか、外国で買い物を する際に、 店員 に 高 額 紙 幣 ( たとえば 英 5 0 ポ ン ド = 約 7 千円 や 1 0 0 ド ル = 11,400円 ) を差 し出すと 入念 に チ ェ ッ ク されたり、レ ジ の近 く に備えつけた 紫 外 線 照 射 器 で 真 贋 ( し ん が ん、本物 か 偽物 か ) を チ ェ ッ ク された経験者 がいると思います。

特に 高 額 紙 幣  や 汚 い 現 地 紙 幣 の場合、その受け取りは 慎重 であり、何度も 紙 幣 を 確 認 したり、少 額 紙 幣 の 持ち合わせがないかどうか尋ねられたり、極端な場合には高額紙幣の受け取りを拒否されることもあります。


[ 12 : 日 本 に お け る 偽 札 ]

日本の 紙 幣 についてはこれまで 偽 造 が 難 しいこともあって、欧米諸国ほど頻繁に 「 ニ セ 札事件 」 が起きませんで した。日本で起きる 「 ニ セ 札 事 件 」 は、次の二つの タ イ プ に分けることができます。一 つは市販の パソコン ・ プリンター ・ スキャナー を利用 したもので、簡単に 偽 造 できるもの の 容易に バ レ 易 い 偽 札 です。

もう 一つは、一 見 判 別 が難 しい 精 巧 に作られた 「 ニ セ 札 」 で、平成 1 4 年 ( 2002 年 ) の年明けに、東京の 浅草 ・ 上野 ・ 新宿 ・ 渋谷で100枚、大阪で 400 枚など、 合計 1,000 枚 以上の偽 1 万円札が発見されま した

使用 した犯人は 中国人 ・ 台湾人 であり、背後に 外国人 グ ル ー プ による 大掛か りな 偽 造 組 織があるとされ、偽 造 紙 幣 の 中 には 日本の A T M を く ぐ り 抜けるものがあ りま した。

そのこともあって 二 年後の 平成 16 年 ( 2004 年 )に、前述 した ホ ロ グ ラ ム などの 高 度 な 偽 造 防 止 技 術 を取り入れた 紙 幣 を、発行することになりま した。


偽 造 通 貨 の 発 見 枚 数

発 見 枚 数 とは、 届 出 等 に よ り 押 収 したと して、都道府県 ・ 警察本部 から 警察庁 に報告のあった 偽 札 や 偽 造 5 百 円 硬 貨 の 枚 数 のことです。

( 平成 28 年 11 月 15 日現在 )

-
年 次
区 分
平 成
24年
平 成
25年
平 成
26年
平 成
27年
平 成28年
1月 ~9月
1 万 円 券( 札 ) 1,4575871,581793886
5 千 円 券 109741083323
2 千 円 券16
千 円 券380303545366156
偽 造 銀 行 券
の 合 計
1,9509662,2351,2081,067
年 間 推 定
1,423
偽 造 硬 貨
5 百 円
1,8721,358637635326
年 間 推 定
435


参考までに お札 は 財務大臣 の命令に従 い、日本 の 中央銀行 である 日本銀行 の 発注に基 づき 国立印刷局 が製造 し、納入 しています。

日本銀行に納入するお札の量は、年間 約 3 0 億 枚 といわれ、お札の 厚 さは 約 0.1 m m なので、3 0 億枚を積み重ねると 約 3 0 0 キ ロ メート ルとなり、富士山の高さの 約 8 0 倍 もの 高 さになります。

なお、お札の 平均寿命 は 1 万円札で 4 ~ 5 年 程度、 5 千円札と 千円札は使用頻度が高 く 傷 みやすいこともあって、 1 ~ 2 年 程度 とされて います。


[ 13 : 自 動 販 売 機 と A T M ]

自動販売機の起源を探ると、紀元前 215 年に エジプト の寺院で洗礼や ミ サ などに用いる 「 聖なる水 」 を売るための装置が作られていて、この 自動販売機 の 硬貨投入口に 5 ド ラ ク マ 硬貨 ( 現在の 200 円 相当 ) を入れると、その重みで 栓 が開いて 聖 水 が出る仕掛けで した。

また 1615 年には イ ギ リ ス に現存する世界最古の 「 タ バ コ 自 販 機 」 があり、19 世紀後半から 「 偽 造 通 貨 」 排除機能を持つ 自販機 や、ゼ ン マ イ 仕掛けの 動力 で 商品 を 排出 するものなども現れま した。

自販機

しか し現代のように自動販売機が普及すると共に、「 偽 造 コ イ ン や 偽 造 紙 幣 」 が使用されるようになったため、「 偽 造 通 貨 」 の 排 除 機 能 なども 必要 になりま した。左図は 日 本 自 販 機 工 業 会 の 資料 を 引用 したものですが、日本 と アメリカ の 二箇国 しかないのが残念です。

偽 の 硬 貨 や 偽 札 鑑 別 のために、磁気 セ ン サ ー に加えて 可視光線 セ ン サ ー ・ 赤外線 セ ン サ ー ・ 紫外線 セ ン サ ー などが複合的に用いられ、偽造貨幣 を排除する機能も A T M 並に 精密化 ・ 高度化 されているそうです。

ATM 支払い機

治 安 の 悪 い 国 の 住 民 にとって、自 販 機 は 「 商 品 と カ ネ が入った 盗 み 易 い 箱 」 であり、日本のように道 路 ぎ わ に 設 置 されている 国 は 珍 し く、外 国 で は 監視 し 易 い 屋 内 にあるのが 普 通 です。


( 13-1、も し 偽 札 を つ か ま さ れ た ら )

外 国 では買い物を した際 の お 釣 り はもちろん、銀 行 の A T M から 偽 札 が出て く る場合があるといわれています。8 4 歳 の 私は これまでの 人生 で 偽 札 を つ か ま さ れ たことなど 日本 で 一度もありませんで した し、間もな く お 迎 え が来るので、死ぬまで 無 いと思 います。

火事などでお札が半焼けになった場合には 日 銀 本 ・ 支 店 に行けば 表・裏 の 両 面 があることを 条件 に、面積を基準に新しい銀行券との引換えてくれます。面積 が 5 分 の 2 以上、3 分 の 2 未満 の場合は 半 額 と して引換えます。

また、面積が 3 分 の 2 以上の場合は 全額、5 分の 2 未満 の 場合は 失 効 ( つまり 銀 行 券 と しての 価値 が 無 い こ と ) になります。ま た 例 え ば 1 万 円 券 が 半 分 し か 残って いな い 場合 は、 5 千円 と して 引換 えて く れます。

では 偽 札 の場合は どうで しょうか(?)。万一 日本でそういう 事態 に遭った場合には、日 本 銀 行 の 本 ・ 支店 に行っても 正規 の 紙 幣 との 交換 は絶対に してくれません。ではどうすればよいので しょうか?。正 解 は 警察 へ 偽 札 を届 け出ることです。

後日、偽 札 捜 査に 協 力 して く れた 謝 礼 と し て 、 偽 造 紙 幣 と 同 額 の お 金 が支払われます。

ちなみに中国を 初 め 外 国 で は 偽 札 発見に対する 謝礼制度 は 存在 しないので、運 悪 く 偽 札 を受 け取った人 は、ト ラ ン プ の 「 バ バ 抜 き 」 のように、速やかに 他人 に バ バ を つ か ま せ る のだそうです。も し 店員 が 偽 札 を受け取った場合には、自分が 店 に 弁 償 しなければならないと いわれています。

日本ではこの 謝礼金 について、警察は 一切 口 には出 しません。なぜなら、自分で 造った 偽 札 を警察に持ち込む 偽 造 犯 人 が 出 て来る かも しれないからです。前述 した 通 貨 偽 造 ・ 行 使 の場合の 罰 則 規 定 、 無 期 又 は 3 年 以 上 の 懲 役 に 処 す る を、く れ ぐ れ も お忘れな く 。( 終 わ り )


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