| ・橋本源氏・ |
橋本 治 |
中公文庫 「窯変 源氏物語」1〜14 |
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平成3年から刊行開始。
これも田辺源氏と同じく、『源氏』を下敷きにした小説です。ご本人いわく、「文字による『源氏』の映画化」。
筋や場面の創作を行いますが、大筋は変えていません。
最大の特徴は、何と、光源氏の一人称で書かれてるっていうこと。(宇治十帖は三人称)
かなり無理があるけど。…だって光が知らない筈のことまで光が説明するんだもん。
瀬戸内さんとの『女人源氏物語』に関する対談の後にひらめいたらしいので、その影響でしょうか?(『女人〜』は女性の一人称)
和歌は、光が自分がどう解釈したか、が載っているか(これがまたエライ曲解なんだ)、それとも歌だけ載ってるか。そして歌は改作されてます。これは、その登場人物の「キャラクター」を出すためだそうです。
文体は「だ・である」調。
語釈はしつこいくらい訳中に入ってます。しかし、ダテに長くなくって、有職故実などの説明もそれだけで価値があると思うし、あと何が凄いって、色んな学説を踏まえたうえでさりげなく書き流しているな、って思う箇所がいくつもあるんですよ。Moriが気づくだけでも結構あるんだから、その何倍もご本人は気を使って書いていらっしゃるんだと思います。
これを読むだけで、平安時代の宮中儀礼や官位進行、習俗風習の勉強になります。
すごくいいのは、各帖の最初に系図がのってて、更に年齢が加えられていること。(「年齢なんか気にしながら読むのは邪道だ」という意見もあるけど、一般読者にとっては、やっぱイメージ湧きやすいですよねえ)
ただ…ちょっとMoriは苦手かな〜〜〜〜。(^_^;)
だって長いしさーーー。他の人が文庫で5冊平均なのに、14巻なんですよ。14巻。
ご本人はとても頭がいい方なんだと思うんですが(東大卒だし)、古文に疎い読者にそれを紹介しようとして、ちょっと行き過ぎている気がしないでも、ない…。
文章が超ロングカーブな上に、何度も同じ事を説明されるので、「わかったよ、さっき聞いたよ」と短気なMoriは思っちゃう。勿論、「それがいいんだ!」という人もいると思いますが…。
あと、人間の醜悪な部分・現実的な部分を強調して書くスタンスを貫いていて、まあ、そういう試みの作品なんだと思うんですが、個人的には抵抗を感じます。
悪玉だけじゃなくって、善玉の登場人物も、すごく利己的でエログロに書かれてるんですよ。特に若い頃の源氏がよく怒るんです。…それが「若さ」の表現なんでしょうが、その割には理屈っぽくて、うう〜〜ん、オトナがこじつけたって感じも。。。しないでもない。
女房とかのキャピキャピ言葉にも、女性から見ると無理があるような。。。
好きな人、ごめんなさーい。でも、Moriは文章の好みの問題で、どうしても肌に合わないのです。
ただ、これも橋本ファンにはたまらないのでは??
それほど強烈な橋本ワールドが展開されてるってことですし。
しかも、『源氏』に対する独自の「読み」には一読の価値があります。「ああ、そういう解釈も成り立つのか」と感心させられることが多いですし。学術論文などでも人物論の一端として引かれることがあるようです。
この中にいくつもの人物論が埋め込まれているって感じ。
この本は、橋本ファン、『源氏』のパロディを楽しみたい人、『源氏』に凄く詳しい人、が読むべき本だと思います。
初心者がうかつに手を出すと、ヤケドするのではないでしょうか。