MORI GATARI
源氏物語 エッセイ WORK 新刊案内

  ・総角・  
  宇治の八の宮の一周忌を迎えまして、残された美人姉妹の世話役・は、宇治へ行っていました。
「夜もふけたので、今日はこちらに泊っていこう」という事になったのですが、御簾(<みす>=すだれ)や屏風を隔てて大君<おおいぎみ>とお話をしているうちに、女房(<にょうぼう>=高級侍女)たちが気をきかせていつの間にやらみんな下がってしまい、ハッと気がつくと、アラ、2人っきり。
大君、うかつ!
いっくら何でも、ここで大人しくしているほどもバカじゃありません。
すかさず御簾の内に入り込み、逃げようとする大君をつかまえます。
はしっ!
ハラハラとこぼれかかる髪をかきやると、まあ、姫の何とゆかしく美しいことか!ホレ直しちゃうゼ!
しかし、何たって姫は喪服、ところは仏間なので、さすがにそれ以上の行為に及ぶわけにも行かず、その晩はそれであおずけ。アラ。(^^;)
暁ごろ、やっと大君を追い出すのに成功し、自室へと戻りました。
いつも中の君と一緒に寝ているので、その寝所で横になります。
不穏な空気を感じていた中の君は、姉の帰還が嬉しくって、そっと夜着<やぎ>をかけてあげます。すると、何という事でしょう!大君からまごうかたなきの移り香がするではありませんか!(ホラ、体からイイ匂いがする、という不気味な奴だからさ)
「ああ、ではやはり姉君薫の君と……。おいたわしいこと…」
と、そっと心の中で思う中の君です。
しかし!実は何もない上に、大君の方では、この中の君をまとめたい、と心中深く決意しているのです。
「わたくしはもう年だもの。それよりもこの若く美しい中の君を幸せにしてあげなければいけないわ。……それには、あの浮気な匂宮<におうのみや>さまよりは、実直な薫の中納言の方が……」
てなわけです。
ま、大切な妹を任せようと思うくらいですから、大君のことは悪くは思ってないわけなんですよ。
しかしその気持ちは、可愛い妹との縁談、という方向に向いてしまう…。
そんな事とはつゆ知らないは、また暫くしてやって来て、熱心に中の君匂宮の事を薦めます。
「いいご縁じゃないですか!」
で、匂宮から、「何とかせんかい、ボケ!」と言われているのですね。
色んな人の思惑が乱れ飛びますが、貴族の恋には女房の思惑も大事です。宇治の女房たちは、やっぱり生活が安定して欲しいから、とにかく大君にまとまって欲しい。
はそんな女房たちを味方につけ、姉妹の寝所に手引きしてもらうことに成功します!
しかし肝心の大君は、その気配を察して、そっと抜け出してしまいました。
残された中の君は、突然男に忍びこまれてビックリ。
もビックリ。
こ、これは妹姫の方じゃないか…。
してやられた。
据え膳食わぬは…という言葉もありますが(時代が違うって)、計算高いこの男は、色々考えて、ここは取りあえず我慢する事にしました。グッ。
一方中の君は、姉からとの結婚の事を匂わされていたので、
「まあ、それじゃ、あのお話は、このことだったのだわ。姉君がこんな謀<はかりごと>をなさるなんて…」
と、大ショック。
翌朝になり、が帰っても、一言も言葉を交わさない姉妹。…気まずーい。(^-^;)
はこの一件で、自分に中の君をあてがいたいと思っている大君が本気な事を悟り、それならそれで、別の手段を講じようと思いました。
名づけて「中の君匂宮くっつけ大作戦」です。
こっちがまとまってしまえば、大君も自分との事を真剣に考えてくれるに違いない…。
もとよりに異存はありません。
「おお、オマエもやっと斡旋しくれる気になったか!親友よ!!」
ちなみに今、匂宮は25歳、は24歳です。大君は26歳、中の君24歳。
さて、は何とかコッソリ京を抜け出し、超おしのびで宇治へ向かいます。
上手く中の君の寝所へ手引きし、自身は大君とおしゃべり。
そこで事の真相を聞かされて、ビックリ仰天の大君です。
ひ、ひどい!そんなだまし討ちみたいな事……!
でもデキちまったもんは、しょーがありません。後は匂宮を婿君として丁重にもてなし、少しでもマメに通ってもらう事を祈るしかないのです。
ま、とりあえずは3日つづけて通ってもらわなくちゃなりません。それでなくてはまともな結婚ではありませんから。
2日目は、問題なく過ごします。よっしゃ!
しかしトラブルは3日目に発生。宮中でが、母・明石中宮<あかしのちゅうぐう>につかまってしまい、抜け出せなくなってしまったのです。
待っている宇治では気が気ではありません。
の手助けで何とか脱出に成功する匂宮。激しい山風を冒しての宇治到着です。
ふう〜〜。セーフ!
美しく、世慣れぬ初々しさを持った中の君に夢中になる匂宮ですが、やはりいくら恋こがれても、親王たる身で、そうホイホイと遠い宇治へ通うわけにも行かず、3日間の後は、何かと途絶えがちになって行くのはどうしようもありませんでした。
本当に、本当に、この男にしては珍しく本気で打ち込んでいるんですけれども、宇治にひっこんで暮らしてきた世間知らずの姉妹に、そんな事情が実感できる筈もありません。『ひどい…』としか思えないのは当然でした。
大君には、そんな匂宮の薄情な仕打ちがこたえたのでしょうか、気苦労が重なり、次第に病の床につくようになってしまいます。かえって本人の中の君は、匂宮の「愛♪」を信じているので気が楽なんですけどね。こういうのは、ハタの方が気を揉むものなんでしょう。
大君の容態は、どこがどう悪いというわけではないのですが、ドンドン弱って行きます。
も度々見舞いに馳せ参じ、大君の側近くで看病をします。
気持ちだけは美しくよりそう2人は、まるで長年の夫婦のよう。
しかし、の必死の祈りと看病の甲斐もなく、大君に見守られながら、ひっそりと26年間の短い生涯を閉じたのでした。
ちーーん。さようなら〜〜。(;_;)/~~~
哀しみに眩暈がするは心密かに思います。
………こっ、こんなことなら、中の君と契っとくんだったぁあー!!
と思っても、もう後のまつり。(^^;)
あの時はとてもそんな気持ちにならなかったのだから、仕方ありません。
ドーーーンと落ち込んで宇治にこもりっぱなしの
そんな噂は当然京にも伝わりまして、「あの、薫の中納言が、そこまで思い入れるからには、その亡き人の妹君も、並々の姫ではあるまい」と明石中宮のお心が動きました。
「そんなに愛しいお方なら、二条院の西の対にお迎えしてお通いなさいな」
こうして中の君は晴れて都人にも認められたのです。
哀しい中にも嬉しいオマケがついてきた宇治の年の暮れでした…。
 
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