MORI GATARI
源氏物語 エッセイ WORK 新刊案内

  ・真木柱・  
  やってくれました、髭黒<ひげくろ>くん!!
あっと驚く大逆転!
そうです、モノにしちまいました。玉鬘<たまかずら>を!
皆の心は出仕に向けて一直線!だったのに、弁のおもと、という玉鬘付の女房を仲間に引き入れて、とうとう奇襲作戦を決行、まんまとトンビに油揚げ状態です!
今の世の中では押し入り強盗…いえ、強姦と何ら変わりはありませんが、「やっちまえばこっちのもの」なのがこの時代のスゴイとこで、こうなったからには、源氏髭黒の右大将を婿君として丁重にもてなさなければいけません。
相手の身分も重いし、ここでキチンとしなければ、玉鬘の立場がなくなってしまうのです。実の父・内大臣も歓迎してる話ですし。
…しかし、源氏としては目もくらむ思いです。
おおおおお、オレだって必死こいて我慢してたのに、こっ、こんな無骨な男にしてやられるとは…!
もガックシ。「何も女御入内ってわけじゃないんだから、尚侍<ないしのかみ>として出仕だけはしたら…」と未練タラタラ。
蛍兵部卿宮<ほたるひょうぶきょうのみや>だって面白くありません。入内<じゅだい>するっつーから諦めたのにさ。ぷんぷん。
あとは一々書きませんが、何せ玉鬘は当代のかぐや姫、ガックシ来た公達<きんだち>は山のようにおりました。
しかし何と言っても、事の次第に驚き呆れたのは他ならぬ玉鬘本人です。
今までハナにも引っ掛けなかった無骨者に、「モノ」にされてしまったのです。
なっ、なんでこのアタシが…。
おまけにこのうっとおしい男は昼も夜も玉鬘の部屋に入りびたり。
玉鬘はドドーンと落ち込み、すっかりふさぎこんでしまいました。今となっては、源氏にあれこれ言い寄られていたのもいい思い出です。なんだかんだ言って源氏は手を出しませんでしたから。
一方、鬚黒邸。
ここには、例の北の方、式部卿宮の娘と彼女の産んだ子供達三人が暮らしています。
北の方は、もともと「物の怪つき」状態、現代でいうならばノイローゼ気味で、時たま心神喪失状態に陥ってしまうという、これまたうっとおしい女君です。
しかし何と言っても、長年連れ添った夫婦ですし、可愛い子供達もいます。
髭黒としては「離婚」、までは考えていないのですが、北の方の実家からは「そんなに馬鹿にされてまでしがみついてるこたぁない!帰ってこい〜〜!」というお達しが来ています。
しかし、思い切れない北の方…。
さて、そんなある日、北の方は、玉鬘の許へ出かけようとしている髭黒の世話をかいがいしく焼いてあげていました。
そこへやってきた例の物の怪の発作。
イキナリその辺にあった火鉢をガガッとつかんで、ザバァ〜〜っと髭黒に投げつけます!Oh,my God! なんて事すんでい!!
「ウキーーーッキッキッキ!!」
…と言ったかどうかはわかりませんが、とにかく半狂乱でもう手がつけられません。こっ、こわ〜〜い。
(^。^;)
髭黒だって神様じゃありません。そんな事されたら、余計うっとおしさがつのるだけです。
翌日六条院に行ったっきり、暫く自邸には戻りませんでした。
そんな髭黒の留守に、とうとう北の方の実家、式部卿宮邸から、お迎えの車が来てしまいました。
事ここに至ってとうとう北の方も観念し、実家に戻る決心をします。
「ちょっと待ってよ!!!」と言いたいのが、髭黒の長女の姫です。
髭黒は彼女を溺愛していたので、お姫さまも若干ファザコン気味。
「お父様に一目お目にかかってからじゃないと、どこへも行かない!」
と駄々をこねますが、髭黒は今日も帰ってきません。
ああ、もうこれまでか…、と、姫はいつも寄りかかっていた柱に、「真木の柱よ、わたしはこの家を出て行くけれど、お前だけはわたしの事を忘れないでね」なんて悲しい歌を書きつけて、いえ、書きつけた紙をねじ込んで、泣く泣く邸を後にしたのです。
このエピソードから、このお姫さんは真木柱<まきばしら>ちゃんと呼ばれまーす。(この真木柱ちゃん、なぜか最後の方まで出てくるので、覚えといてね!)
話を聞いた髭黒が慌てて式部卿宮家に迎えに行っても、門前払い。
スゴスゴと息子二人だけを連れて帰る髭黒クンでした…。姫よ、許しておくれ…。
さてさて、再び六条院。
玉鬘はそんな騒ぎを聞くにつけても落ち込みが増すばかり。案の定、紫の上まで式部卿宮家から悪く言われる始末ですし…。
そんな玉鬘を見て、髭黒は今までしぶっていた玉鬘の出仕を許してあげる事にしました。
新年に尚侍・玉鬘は御所に上がります。
それはそれは美々しいお支度で、大変な威勢だったのですが(だって養父・太政大臣、実父・内大臣、夫・右大将だもんね〜)、髭黒が「すぐっ、すぐ、退出するんだゾ!ほれ、帰るぞ、ほれ、帰るぞ!!」とウルサイの何の…。
あっという間に退出する事になってしまった玉鬘ちゃんです。(;_;)
主上(<おかみ>=帝)は玉鬘の美しさを目の当たりにして、「しまった!これほどの美女だったとはぁ〜〜!ああっ、惜しい事を!」と並々ならぬご執着。
この後も何やかやと玉鬘に文を送りつづけます。(相手にされないけど)
さて、当然六条院に戻るものと思っていた玉鬘ですが、どっこい、髭黒くんには最初っから下心がありました。
名づけて玉鬘奪取作戦。
いっくら「玉鬘を引き取りてえ」と言っても源氏のお許しが出なかったので、この機会に何だかんだと理由をつけて、玉鬘を自邸に迎えてしまおうと髭黒は計画を練っていたのです。
だから出仕を許したのね!?
まあ!腹黒!!いえ鬚黒!(あれ?)
ビックリドッキリの玉鬘ですが、もうこうなってしまっては、致し方ありません。
落ち着くとこに落ち着いてしまったという感じでしょーか。
養父・源氏の懐かしい手紙に泣き濡れる事もありますが、髭黒の先妻腹の息子二人とも仲良くやり、その年の11月には可愛い男の子も生まれ、何だかんだと玉鬘ちゃんは着実な人生を歩いて行くのでした…。
ちゃんちゃん。
さてさて、以上を持ちまして、玉鬘十帖の終焉でございます。
長らくのおつきあい、ありがとうございました〜♪
 
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