MORI GATARI
源氏物語 エッセイ WORK 新刊案内

  ・蓬生・  
  さて、みなさんは、末摘花<すえつむはな>ちゃんを覚えてますか?
顔もようわからんと契ってみたら、この世のものとは思えないほどブスだった、あの姫です。アカ鼻の末摘花ちゃん。
この末摘花ちゃん、その後は一体どうしていたのでしょう。
源氏も、しばらくはこの落ちぶれた宮家の姫の面倒を見ていたのですが、自分が都落ちしてからは、それどころじゃなくって、スッカリ忘れ果てていました。
おかげで邸は荒れまくり。
夜になるとフクロウは鳴く、木霊<こだま>が行き交う、もう大変です。
昼は昼で、牛飼い童が牛を放牧してます。モ〜〜。
こらこら!ここは宮家だぞ〜〜!!
あげくの果てに、母方の叔母ちゃんに、「ちょいとアンタ、うちの旦那が転勤になって、あたしたちみんな筑紫(=福岡)に行くんだけどさ、アンタうちの娘の女房(<にょうぼう>=高級侍女)になってついてこない?」なんてことを言われます。
ヒドイわ。アタシ、腐っても宮家の姫よ!!
こんなになっても、健気なだけが取柄の末摘花ちゃんは待ちます!
あの方が、都にお戻りになれば、きっと……。
もどってきました!!
……が、末摘花ちゃんのことは一向に思い出しません。
がーーん。
なまじ近くにいると、思い出してもらえない我が身が余計に哀しくみじめです。
源氏の「法華八講<ほっけはっこう>」という仏事に参加した末摘花のお兄ちゃん、禅師の君<ぜんじのきみ>という坊さんは、「いやあ、スゴかったよ!源氏の君は、尊いねえ。仏様の化身だよ。きっと!」
なんて呑気なことをぬかします。 『…薄情な仏さまもいたもんだ』とさすがの健気な末摘花ちゃんにも恨み心が湧いてきます。ふつふつ…。
仲良しだった乳姉妹の侍従<じじゅう>も例のオバちゃんに筑紫に連れてかれちゃって、身も心も寒い…。る〜るる〜るる〜〜。。。
さて、そんなこんなで源氏が帰京してから、秋が過ぎ、冬がきて、4月になりました。もう初夏です。
源氏花散里<はなちるさと>ちゃんの家へ向かう途中、なんだか見覚えのある家に気がつきました。
……誰んちだっけ。
ああ!末摘花ちゃん家じゃん!
どうしてっかな。まだ生きてっかな。
と、ようやっと彼女の存在を思い出した源氏は、惟光<これみつ>に邸内をさぐりにやらせます。
『こんなとこに人が住んでるわけねー』と惟光もおっかなびっくりですが、ナント!いましたよ、人が!昔変らぬ、末摘花ちゃんとその女房たちが!
報告を聞いた源氏は、とりあえず寄ってみることにしました。
ごたいめ〜〜ん。
「君がちっとも連絡をくれないから、君の心を試そうと思って、こちらからも連絡しなかったんだ。でも、君の家の前を通りかかって…。ああ、もう僕の負けだよ」
とか何とか、相変わらず口からでまかせを言う源氏。嘘つけこのヤロ、よくもまあ…!
そんな嘘つき源氏も、おバケ屋敷でひたすら自分を待っていた末摘花ちゃんをさすがに哀れに思い、この後はこまごまと姫の面倒を見てあげるのでした。
例のオバちゃんは悔しがりましたとさ。
めでたし、めでたし♪
 
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