MORI GATARI
源氏物語 エッセイ WORK 新刊案内

  ・紅葉賀・  
  朱雀院<すざくいん>というとこに帝以下大勢で行って、宴会しちゃおうゼ、という企画がありまして、その中で源氏頭中将と一緒に舞を舞うことになりました。
「そんな楽しい企画に、愛しい藤壺ちゃんが参加できないのは残念だ」ということで、事前に宮中で試楽(=リハーサル)をさせることにした帝です。
鮮やかな夕陽が差す中、美しく着飾った源氏が雅やかな楽の音のもと、キリリと舞う。シブい声で吟詠しちゃったりなんかして、いやもう、その美しさときたら、そら恐ろしいほどです。
イロ男を自認する頭中将と踊っては、いい引き立て役。
藤壺の宮が見てるとあっちゃあ、源氏だって力が入ります。もドキドキしてしまいましたが、後で桐壺帝に「どうだった?よかったねええ!」と言われて、返事に窮してしまいました。うっ。
うーん。浮気するってタイヘン。
本番の朱雀院での舞も大成功でした。はらはらと紅葉が舞う中での源氏の美しさは、もう神がかりです。
わたしが思うに、これが源氏の人生のハイライトだったんではないかしら。若さと美貌と権力にあふれ、今で言えば武道館のコンサートで大熱唱!というところ。
この紅葉賀での「青海波<せいがいは>」という踊りは後々までの語り草となるのでした。
さて、年も明けて源氏は19歳になりました。
そして2月には藤壺の宮が無事に男皇子を出産します。
4月に宮中に上がった皇子ですが、そこで源氏は始めて我が子を目にします。
桐壺帝が皇子を抱きながら、「ほら、お前にそっくりだろう?やっぱり美しい者は似るんだなあ!」なんて呑気なことを言っています。ばか。
源氏はもう真っ青です。陰で聞いている藤壺の宮も冷や汗タラタラ。
さてさて、そんな重苦しい宮中の雰囲気ではありますが、そんな中源氏はこんなこともやってます。
源典侍<げんのないしのすけ>というバーサンが宮中に仕えてまして、もう60歳近いのですが、いまだにお盛ん♪というすごい人でして、実は源氏も以前に興味本位でこのバーサンと契ったことがあります。すごいぞ、源氏!60だぞ? 60!!
でもさすがに1回こっきりでほっといたのですが、典侍サイドとしては、忘れられない。宮中で2人っきりになった時にすかさず、「アタシ、いつでも準備オッケーなのよ。お願い、来て来てン」みたいな歌を詠みかけます。気持ち悪いんだよ!!
おまけに参ったことに、それを帝に見られて、2人はすっかり宮中で噂になってしまいました。しまったぁ。
驚いたのは頭中将です。
「あのバーサンか。忘れてたぜ。俺の知らないうまみを源氏が知ってるなんて、許せねえ」とばかり、これまた典侍と関係を持ちます。
そんな折、源氏典侍が宮中で1人琵琶を弾きながら歌っているのを聞いて興をそそられ、そのままバーサンとまたもや枕を共にします。…考えらんねー。
しかし!実はその様子を頭中将が通りすがりに見ていたのでした。
この人が、こんなオイシイ発見を逃すはずがありません。
「もう眠ったかな?」という頃合を見計らって、2人の部屋に入り込みます。…ちょっと待て、「その間」キミはずっと待っていたのか!?
さあ、あわてたのは源氏です。なにせ源氏はあられもない格好、こんなところを見られるのも、着物や冠をひっかけつつ逃げて行く姿を見られるのも、とても天下の光源氏のすることではありません。
…ど・ど・ど、どーしよう。
あせりつつも「おい、オマエのじーさん恋人だろう。ひどいじゃないか!」かなんか典侍を責めたてていると、なんと相手は源氏が隠れている屏風をバタンバタンとたたんでしまい、刀を引き抜くではありませんか!あら、あんたたち刀なんて持ち歩いてたのね!!
嫉妬に狂った間男のフリをしている頭中将は、もうおかしくて吹き出す寸前。
あまりのオーバーリアクションにかえって源氏も気がついてしまいました。なんだよ、ちくしょー、こいつ頭中将じゃねーか!
相手の腕を取ると「おっまえね、いい加減にしろよ!冗談にもホドがあるぞー!」と思いっきりつねりあげます。
頭中将も大笑いで、今度は源氏の着物を着させません。源氏も「ちくしょー、そんなら、オメーもだよ!」と中将の帯を脱がせ、もう大乱闘です。
ついには、2人ともあちこちほころびて、滅茶苦茶になった着物のままで仲良く帰って行くのでした。
残されたのは、唖然ボーゼンの典侍です。いいんだよ、オマエなんか!
2人は、翌日お互いが厳粛な顔で政務を摂っているのを見るにつけ、「なにスカしてやんでえ」とおかしくてたまりません。
以降、2人は何かにつけてこの騒ぎを笑いのネタにし合うのでした。
この辺は、『伊勢物語』のバーサンと契る話を下敷きにしていると思われます。
これは、男の願望なのかなぁ。女の願望なのかなぁ。
さて、この巻は、藤壺の宮が中宮(<ちゅうぐう>=帝の正妃)になり、源氏が宰相の中将になったところで終わりを告げます。
重いような軽いような、ヘンな巻でしたね。
 
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