2001.05.24

ハンセン病訴訟

昨日、大方の見方をくつがえして、政府はハンセン病訴訟の熊本地裁の判決に対して控訴しないと
発表した。
6時過ぎのニュースの中で速報の形で伝えられた「控訴せず」の報を聞いたとき、よかったって思い
ました。元患者さんたちは、どんなに待ち望んでいたことでしょう。
熊本地裁の判決は、当然の判決であると思いますが、にもかかわらずこの国では、よく出してくれた
と思える判決なんですよね。なかなか、三権分立が実現していない、この国では。
上級審ではきっと政府よりの判決が出てきてしまうのが今までの例ですもの。

でも、政府が間違ったこれまでの施策を指摘されて、間違ってましたっていうのがどうして言えない
のか理解できなくて、何度も子どものように、どうしてって、聞いてしまいました。

国(政府、国会)の間違いは、1940年代には薬物治療で治る病気であることが世界的に知られて
おり、1956年には、ローマで行われた「ハンセン氏病患者の保護および社会復帰にかんする国際
会議」で、日本のハンセン病政策が批判を浴びたにもかかわらず、「らい予防法」に固執しつづけた
ことです。
ひとつの施策が制定される時には、その時の知識、情勢に規定されるのはあたりまえと思います。
しかし、時がたって、新しい知識が蓄えられて、過去に考えていたことが間違っているということが
わかれば、その時点ですばやく施策の再点検をして、変えなければいけないことは変えるという
ことが必要でしょう。それを、間違ったことはしないという前提で、いつまでも前例を守り続けると
現実や今わかってる真理から遠くかけ離れたものになっていかざるをえないでしょう。時が経つほど
その乖離は大きなものになって、埋めがたい傷をつくってしまうのではないでしょうか。

ハンセン病も、エイズも世界の知っている事実とはかけ離れたところに日本のレベルがあったという
ことは、施策をつくり行う政府の責任であると同時に、いずれにもかかわる医療人の怠慢でもあった
と。患者さんの権利と生存を守る医者がどんなことをしてきたのかと、問い掛けられているように
思います。

小泉首相の今回の決断が、たとえ参議院選挙をにらんだ国民向けのパーフォーマンスの一部で
あったとしても、控訴せずという結論と現実は、患者さん、元患者さんにとって本当によかった。
弁護団の団長の弁護士さんが「望みが無いように言われるが最後までやってみなくては」って
言ってられたようです。あきらめずに、首相官邸にもつめかけて、決断を迫って結果が出てよかった。

これからもすぐに故郷に受け入れられるということにはならなくて、厳しい現実の中で、やっぱり
療養所に戻って暮らしていかれるかたたちも多いのでしょう。
これからが、私たちに問われていることですよね。差別と偏見のない世間ができるのかどうか。

ハンセン病とその患者さんたちの闘いについては

             ●日本におけるライ対策とハンセン病政策
             
             ●ハンセン病・国家賠償請求訴訟を支援しましょう。 

             ●知って! ハンセン病国家訴訟 −ハンセン病国賠弁護団−

             ●国立療養所 邑久光明園

HOME HARD TALKトップ