It' only a Blue Moon

「そんな話で怖がるほど、あたし子どもじゃないわ」

そう言って、安見はぽんとスツールから降りた。
「―――で、こうやって降りたところで、ちょうど目が覚めちゃったの」
午後の昼下がり、『レナ』には他に客はいなかった。空は抜けるような晴天で、普段のこの天気なら、海水浴帰りの客がテラスの席を占領しているところだろうが、今日のところはカウンターに俺と下村が座っているだけだ。手元のコーヒーカップはほぼ空だ。
「店の中には私とあと叶さんだけがいて―――ちょうどほら、坂井さんが今座ってる席に」
そう指差されてつい自分の座っている足元を見てしまう。見たところで何があるわけでもないのだが。なにしろ夢の中の話だし。
「で、なに?わざわざ安見の夢の中に出てきて、怪談をしてったわけかあの人は」
「そうなの。どんな話だったかは覚えてないんだけど。なんていうか実話系みたいな話だった気がする」
「そりゃまた。あの人らしいっていうか」
「大人げないっていうか―――」
評する言葉に詰まり、つい俺と下村は顔を見合わせた。
「怪談ねえ………」
「夏場だから、季節といえばそうかな」
「季節の問題なのか、幽霊ってのは」
「まあ、春よりは夏だろうな」
「そんなもんかね」
「だって肝試しは夏にするものよ、坂井さん」
呆れたように話す俺と下村の会話に安見が口を挟むのに、馬鹿馬鹿しい気持ちになって、俺は言った。
「そんなものより、食中毒の方が怖いね俺は」
「―――坂井さんてば、夢がないんだから」
「ほんと、散文的な男だな」
「うるさい。食い物出す店で働いてる癖に、おまえらの方が緊張感がないんだ。食中毒は怖いんだぞ」
だいたい幽霊の話のどこら辺が「夢」なんだよ。そうぶつぶつ呟く俺に、菜摘さんが皿を拭きながら笑っている。
「下村さんはどう?」
「うーん、信じているわけじゃないけど、絶対いないと断言できるほどの信念もない。早い話が興味がないんだな」
「全然そういう話、聞いたことない?」
「さあてねえ。特段身近で聞いた覚えはないな。俺の実家は旅館だったけど」
「旅館とかホテルって、そういう話、多いんじゃないの?」
「生憎、俺は知らないな。少なくともうちの旅館にはそういう話はなかった。ただ、やっぱり注意するよ。やたらと沈んだ様子の男女二人連れとかな」
「そうなの?」
「当たり前だろ。うちの部屋で心中なんかされたんじゃかなわないんでね」
「そりゃそうだ。客商売だもんな。評判にかかわる」
「あとは、暗い感じの女一人旅の客だな。こういうのも要注意だから、チェックインの時からフロントで気をつけて注意する」
「一人旅でも?」
「風呂場で浮かばれてたら、こっちも困るだろう。揃えた履物だけ残ってるというのもな、始末に終えない」
「ああ、そういう意味」
「まあ、それだけじゃないんだが……」
ぼそぼそと呟いた下村は、ちょっと躰の奥の痛いところに触れてしまったかのようにかすかに眉をしかめて言葉を濁した。ついうっかり口を滑らせてしまったという風情だったから、気になったのは俺だけじゃなかったらしい。安見が首を傾げて訊く。
「それだけじゃなかったら、他に何があるの?」
「いや、えーと」
「ねえ、そこまで言われたら気になるじゃない」
「そうだなあ……」
「下村さんてば」
「安見」
カウンターの中で、菜摘さんがたしなめるような声で名を呼んだので、安見は「はあい」と首をすくめて追及を止めた。でも気になるのは俺も同じなので、あとで訊いてみよう。
「ねえ、じゃあ坂井さんはなにかそういう話ってないの?」
「さてねえ………こっちは長いこと水商売だからな。いろんな話はあるけど、どっちかっていうと『人間が怖い』の類だな」
「どんな話?」
「それは安見に話してやるにはあと十年待たなきゃな」
「またそうやって坂井さんまで子ども扱いするのね」
「なんとでも。―――ほら、下村そろそろ行くぞ」
「ああ、じゃあまた」
コーヒー代をカウンターに置くと、俺たちは揃って『レナ』を出た。本社に立ち寄ってから出勤するにはちょうどいい時間だろう。

今夜は店の入りも半分弱といったところだった。こういったときの客の配置というのも、慣れない人間にはなかなか難しい。がらがらに見えるようでは店として見栄えが悪いし、かといって、店の一角だけに人を集めて座らせるのも、店の入りが悪いのがあからさまでよくない。隣の喋り声がつつぬけで耳障りな程でもなく、ほどほどに人の喧騒が伝わるくらい。下村はその辺りは上手かった。バランスの問題というか、これも代打で他の人間にやらせると、妙に不自然な配置になることがある。下村は最初からそつなくこなしていたのだから、もともと向いているということなのだろう。
というわけで、今日のフロアには適当に客の座ったテーブルが散らばり、その間を縫うようにしてグラスを運ぶボーイが歩いていく。出勤しているホステスはいつもより少ないが、今日ぐらいの客の入りならちょうどいいくらいだろう。
カウンターには、初めての客が一人いるだけだった。四十歳くらいだろうか。なかなか陽気な男で、仕事で来たといったが、昔はこの街に住んでいたんだと聞かれもしないのに喋った。忙しい時には少々困るが、客としては悪くない手合いだ。酒を頼むピッチも早い。最初は下村がテーブルに案内して女の子を座らせようとしたのだが、「いや、カウンターに行きたいんだ。いいかな」と言うので、こちらの席に案内したのだった。誰か呼びましょうかと訊くと、「うん、別にいいよ。酒を飲みに来たんだからね」と答え、スツールに腰掛けて物珍しそうに店の中を見回している。
「何をお作りいたしましょう」
「うーん、そうだな……うん、バラライカをもらおうかな」
「かしこまりました」
ウォッカはスミノフを。ホワイトキュラソーとレモンジュースを加え、シェイカーを振ってサーブする。客はカウンターの中の俺の手つきを楽しそうに眺めている。一口飲んでから、嬉しそうな顔をする。顔には出さないけれど、バーテンとしては、ちょっと気分のいい瞬間だ。
「うん、この店にしてよかったよ。久々だったから、まだあるかどうか、ちょっと心配だったんだけど」
「前にもこちらにお越しくださったことがおありですか?」
 それにしては、顔に覚えがない。職業柄、人の顔を覚えるのは得意だ。それもカウンターに座ろうとするのなら、たいがい目の前に座るだろうに。かすかによぎった俺の疑念に気がついたのか、にこにこと笑いながら、すぐに答えた。愛想のいい男だ。 
「うん、来てたのはだいぶん前だからね。住んでたのが八年前までだから、その頃にはよく来てたんだけど」
「ああ、それでは、私がこの店に入る前ですから」
「だと思った。店の内装なんかはほとんど変わってないんだけど、顔を知っている人はもういないみたいだね」
「前のバーテンは……」
「うん、確か若い人だったと思ったよ。もうよく顔も覚えてないんだけど、少なくともあなたじゃなかったよ、うん」
この客は「うん」というのが口癖らしい。彼の言葉によれば、どうやら藤木さんが入るよりもさらに前に来ていた客のようだ。それでは顔を知っているスタッフが店内にいないのも当たり前だ。水商売というのは回転が速いものだし、うちの店である程度の古参になれば、他の店の中核スタッフとして動くのが基本だから。顔に覚えがなかったのが自分が失念していたせいではないとわかって、少し気楽になった。
「久々にね、こっちに来たのは出張なんだよ。こんな日にね。働き者だろ?」
「お仕事というのは大変ですね。私は普通の会社勤めというのはしたことがないので、よくわからないのですが」
「そうか、そういえばこの店の人たちも仕事してるんだから、愚痴るのは筋違いというものかな」
セールスの仕事なんだよと、新たなグラスを傾けながら言う男に、なるほどこの愛想の良さはそういうものかと思ったばかりだった。下村もカウンター付近に立ったまま、店内の様子に目を配っている。

「いらっしゃいませ」
店の入口で、ボーイが新しい客に挨拶する声がする。すっと下村がカウンターから離れて、新しい客を迎えに行った。客は黒いワンピースの女だった。まだ若い。テーブル席になさいますか。そう尋ねたらしい下村に、女は首を振ってすいとカウンターを示した。座っていた客と三つ離れた席に下村が案内する。スツールをひいたのに「ありがとう」と答えて女は腰掛けた。綺麗な女だった。ノースリーブの肩から覗く二の腕は白く、顔立ちも整っている。うちの店のホステスだったら、客が取れるだろうなと思わせる、そんな印象の女だった。
カウンターの中から、「失礼します」と冷えたおしぼりを差し出すと、つと顔をあげて女は「ありがとう」と微笑んだ。長い黒髪がさらりと肩から流れた。最近は髪を染めたりする女が多いなかで、珍しいくらいのきれいなまっすぐな黒髪だ。
「何を召し上がりますか」
「そうね―――じゃあホワイトレディを」
白い顔が微笑む。この店は女の子がつく店だから、女性一人のふりの客というのはちょっと珍しい。前に誰かに連れてこられてから足を運ぶことならあるが、それにしては俺は顔を見た覚えはない。これだけの美人なら、忘れることはないと思うのだが。そんなことを考えながら(勿論顔には出さないで)シェイカーを振り、そっとカクテルグラスに注いだ。

つと指がカクテルグラスを持ち上げる。口元に運んだグラスに添えられた指先が、落ち着いた色合いながら綺麗なマニキュアで彩られているのが目に留まった。コースターにグラスを戻し、女はにこりと微笑む。
「美味しい」
「ありがとうございます」
軽く頭を下げると、女はまた微笑んでグラスに口をつけた。
「あの、もしかして―――」
三つおいた隣に座っていた陽気な客が、窺うように彼女の顔を覗き込んでいる。
「やっぱり。お久しぶりです。あの、数年ぶりですが、前にここの店で―――」
怪訝そうな顔をしていた彼女に「ああ」という理解の色が浮かぶまで、それほど時間はかからなかった。それを見てとったのか、男性客は嬉しそうな顔をして、グラスを持っていそいそと彼女の隣の席に移ってきた。
「久々に出張で来たんです。会えるなんて思ってもみなかった」
「私もここへ来るのは久しぶりなの」
「そうなんですか。嬉しい偶然ですね」
男は相好を崩して喜んでいた。しきりと話しかけるのをうるさがる様子もなく、女は言葉少なに相槌を打つ。白い顔に化粧気は薄く、時折り口元に薄く笑みを浮かべる。そのたびに男の目元が下がるのも愛嬌というところか。たった二人だけながら随分とカウンターは(かなり一方的な会話ながら)にぎやかになった。他愛のない仕事の失敗談などを聴くともなく聴きながら、俺はフロアに目をやっていた。今日はもう客の入りは終わりだろう。下村もまたカウンターの方へと戻ってきて、小声でボーイに指示を出していた。

酒場というのは、基本的に時計を置かないものだ。「もうこんな時間なのか」―――そう思わせて、家のことを思い出させるのは、商売としてうまいやり方ではない。だからこの店にも、目立つところに時計はかけていない。勿論、従業員にしか見えない控え室だとか、カウンターの内側には置いてあるのだが。客としては、時間を確かめるには、自分の腕時計などを見るしか術がない。さっきから俺は、目の前の女性客が、細い手首にはめられた銀の時計にちらちらと視線をやっていることに気づいていた。時間を気にしているらしい。俺もそっとカウンターの中の小さなアラームクロックに目をやった。時刻は11時をまわったところだ。
長針がさらに進み、11時半を過ぎた辺りで、彼女はしびれを切らせたように俺に尋ねた。
「ねえ、今日はオーナーは来ないのかしら?」
「社長のことでしょうか」
「ええ、そう。川中良一さん」
「そうですね……今日はおそらくもう顔は出さないかと思いますが」
「そうなの?」
「はい、営業時間内にはあまり参りませんので」
そう言葉を濁した俺の言葉を引き取るように、「明日は来ると思いますよ。開店時刻直前なら確実にいるかと」と口を挟んだのは下村だった。相手の素性もわからないのに、そういうことを軽々しく口に出すな。トラブルかもしれないだろ。そんな気持ちを込めてちらりと下村を睨みつけると、「いいじゃねえか」と声を出さずにフロマネは言った。口元が笑っている。面白がっているのだ。頭上のやりとりに、カウンターに腰かけた客二人は気づかないままだ。男の客がしきりと何か話しかけているのに、女性は半分上の空といった風情で相槌を打つばかりだ。新しく頼んだカクテルにもほとんど手はついていない。カウンターに並べられた「パルフェ・タムール」……“完璧な愛”という名のリキュールのボトルのラベルをしきりと指でなぞっている。
時計はあと十五分ほどで午前零時―――看板の時刻になることを示している。テーブル席に最後まで残っていた男性四人連れが腰をあげた。下村が入口まで送っていき、まもなく戻ってきた。外の看板の電気も消してきたことだろう。女の子たちも三々五々店を引き上げていき、フロアに残っている客は、カウンターの二人だけになった。ボーイがテーブル席のグラスや灰皿を片づけているなか、女は時折入口の方を気にしていたが、間もなく日付も変わろうとする頃、諦めたように溜息をついてスツールから降りた。
「もう今日は来ないみたいね」
「そうですね……もし御用がおありでしたら、明日いらしていただければ」
「明日じゃもう無理なの」
「そうですか」
「ええ………お会計をお願いできます?」
首を傾げると、髪がさらりと肩を滑った。隣の席の客がコホンと咳払いをして注意を引く。
「ああ、あの………よろしかったら、私に払わせてもらえませんか」
「あなたが?私の分も?」
「ええ、久しぶりにお目にかかれましたし、その、ご挨拶にってことで」
でも悪いわ、いえそんなことは、でも、お気になさらず………そんな型どおりの押し問答が交わされ、最後には女が折れた。
「本当にすみません」
「いえ、こちらも楽しかったですし」
「ではお言葉に甘えて」
きちんと頭を下げて、お先にと女が声をかける。酒には強いのか、それなりにグラスを重ねていたはずなのに、わずかに顔に赤みが差した程度で、酔った気配はほとんど見られない。美味しかったわ。また来られるといいのだけど……と言う女に「また是非いらしてください。お待ちしておりますので」と下村が完璧なフロアマネージャーとしての笑顔で応えた。そのまま女を伴って下村が出口へと誘うのを、男客が未練がましく見送っている。

女を送り出した下村がカウンターまで戻ってくると、最後の客も伸びをして大きなあくびをした。
「さて、私もそろそろ帰るかな」
「ありがとうございました」
「いやいや、いい時間を過ごせたよ………あれ」
客の声と視線に背後をふりかえると、裏口から社長が入ってきたところだった。
「懐かしいなー。久々に来たんですけど、覚えてませんか川中さん」
店に入るなりいきなりぶつけられたいっそ馴れ馴れしいくらいの客の言葉に一瞬誰だっけという顔をした社長だったが、「ほら、八年前までよく来てたんですけど」と言うと「ああ」と笑顔になった。名前を呼ばないということは、名前までは思い出せてないんだろうなと心の中で思いながらも、客の笑顔を壊すのも忍びなくて、無言のまま社長と客との会話を聞くことになった。客と言えば。
「そういえば社長、つい今しがたまで社長を尋ねてきたお客さんがいたんですがね」
俺が口を出すより先に、下村がそう言った。だいぶん口調が砕けている。まだ客が残っているというのに。
「俺に?誰が?」
「名前はおっしゃらなかったんですけど―――若い女性でしたよ。美人の」
「若い女?」
本当に心当たりがなさそうな顔をして首をひねる社長に、俺も内心首をかしげた。てっきり社長の遊び相手の誰かだろうと思っていたのだ。別れるのに失敗したかして押しかけてきたとか、そういうトラブルじゃなけりゃいいがと案じていたのだが。
「社長、何かしくじったんじゃないですか」
下村の言い様は、俺よりさらに容赦ない。
「俺がか?馬鹿言え。そんな心当たりなんかないぞ」
「でも、だいぶん御執心でしたよ」
フロアマネージャーの下村は、客を送り出すのも仕事のうちだ。会計は男が払ってくれたから、女を送り出すときはドアを開けるだけだったが、一歩足を踏み出した女はくるりと振り向いて下村に「川中さんに伝えて」とこう言ったのだそうだ。

―――忘れないで。あたしのこと。そう伝えて。

「そう言って帰っていきましたよ。社長のお知り合いじゃないんですか?」
 少し冷やかすような声で、下村が訊く。
「いや―――誰だろうな」
社長が不思議そうに首をひねったとき、今まで黙ってやりとりを聞いていた客が「わからないなあ」という顔をして口を挟んだ。

「あれ、義妹さんでしょう?」

誰なのかわからないことがわからないというような不思議そうな顔をして、客は言葉を続ける。
「違うんですか?前に何度かお会いしましたよ。名前は忘れちゃったけど、カウンターで隣合わせになって。綺麗な人ですよね」

しばらく時間が止まったようだった。八年ぶりだという客は知らないだろうけど、社長の義妹といえば―――
「美津子……ですか?」
「ああ、そうそう。そんな名前でした。ずいぶん久しぶりなのに、全然変わってなくて、相変わらず綺麗な人だと思ってたんですよ」
彼女に会えただけでも、久々に足を運んだ甲斐があったなあ。しょっちゅう来るんですか?そうはしゃぐように喋る客を「失礼ですが、そろそろ看板の時刻なので……」と下村が押し留めた。あれ、もうそんな時刻?また明日来ますよ。あさって帰る予定なんで。そんな訊かれもしないことをにぎやかに喋り散らして、男は帰っていった。会計を済ませる下村の姿を遠くに見ながら、俺は手元のグラスを磨くことも忘れて、少しぼんやりとしていた。それは社長も同じだったらしい。火をつけたばかりの煙草を、灰皿にぎゅっと揉み潰して、やや放心したかのように宙を見つめていたが、ふと思い出したように呟いた。

「そうか―――今年は美津子の七回忌なんだな―――」

忘れないで。そう呟いた女が何を考えて、ここに来たのかはわからない。彼女が最後に頼んだカクテルグラスがまだカウンター上に残されている。グラスの外側に水滴がついて、流れ落ちた。グラスの中の薄紫のカクテルの名前は“Blue moon”―――その淡い青色に込められた名前の意味は、「できない相談」―――。グラスから視線を落としたとき、カウンターの内側の小さなカレンダーが目に留まった。そうか、十二時をまわったから、日付が変わったのか。

安見がこれを聞いたら喜ぶだろうな。そんなことを取り留めなく考えながら、俺の目はカレンダーの日付に留まったままだった―――ほんのさっき、時計が午前零時をまわる前の日付。明日はもう来られないというのも道理、確かに“できない相談”だった。それは八月十五日―――この世に戻ってきた死者が帰っていくという日だった。

【Fin】
20030818


10000を踏んでくれたげしょさんへ。
いただいたお題は「BDでちょっと怖い話」でした。夏だしね。
しかし私はどうも怪談のセンスがないようで……
『新耳袋』とかも読んでみたんですが役に立ちませんでした。とほ。

あ。冒頭の下村が「女の一人客は云々」と言っているところですが、
『残照』に「一人で来た女客を好きになった」という回想がありましたよね、ということで。
<こんなところで書かないとわからないようなネタを…。

げしょさん、こんなところでどうかしら?