JWOC'99 遠征記  by 尾上秀雄

6月30日
予定外のことが始まったのはこの時からである。
ブカレスト空港に到着して外に出たところに待っているはずの7人が見当たらない
のである。いろんなケースを考えてはいたが、唯一の想定していなかったパターン
かもしれない、2〜3回その辺りを回ったが、いないものはいない。まず彼らの乗
ってきたエアフランス便を疑い確認するが、ちゃんと2時過ぎに到着している。次
にホテルに先にいったのかと調べるために電話を探すが、クレジットカードが使え
る電話がない。両替もしていないがテレカを買おうかと顔を上げたところに交通機
関の案内デスクがあり、女性が座っているのが見えた。状況を説明してホテルに電
話を掛けたいというと、かわりに確認してくれた。結果はそういう11人分の予約
はあるが、誰一人まだ来ていないというもの。
こうなると考えられるのは2つ。パリで乗り換え損ねたか、ブカレストでどこかに
行って戻ってこれなくなったかのいずれか。取り敢えず寺嶋団長のところに連絡を
入れておこうと電話器を見るが、国際電話は無理っぽい。再度先ほどの女性に聞い
て、電話会社のカウンターを教えてもらった。寺嶋宅の電話は夜の11時過ぎなの
に留守電。私の混乱した状況を留守録するが何の解決にもならない。さて本当に困
ったぞと思った時に、またまた先ほどの女性がやって来て、誰かそれらしい人がバ
ス乗り場の方にいるという。やっと加藤君たちの姿を見つける。バスで行こうとい
うことになるが、その前に心配するといけないので再度国際電話で再会の留守録を
する。
聞くと、私の便が16:13到着の表示が出たのに30分待っても来ない上に、出
てくる人が跡絶えがちになったので、もうこの便には乗ってないと思ったらしい。
実際はこの時刻は飛行機が車輪を地面につけた時刻で、そこからゲートまでのタク
シーイング+イミグレーション+バッゲージクレームとくれば、それなりの時間を
要する。彼等が到着した時間帯は人数も少なく、ほとんど問題なく出てきたのでそ
の所要時間が頭にあったらしい。こちらの場合はちょうど入国ラッシュで、イミグ
レーションに長い列ができていたのだ。それもあと6人くらいのところの人が問題
児で、係員がパスポートを持ってどこかに調べにいってしまうなど、列の流れが止
まったりした。結局出て来たのが16:50ということで彼等が立ち去った5分後
だったようだ。
ホテルまでのバス代が必要なので両替し、2人分で5000レイの切符を4枚買う。
1人当たり40円程度と驚くほど安い。彼らが到着したときはたくさんの人が寄っ
てきて怖かったそうだ。タクシー2台で$60とふっかけられたりしていたという
ことで、このバスは正解だった。但しバス停からホテルまでは1km強重い荷物を
持って市内を歩くことになる。それにしても大人しい筈(?)の女性2人はハイテ
ンションで写真を取りまくっている。こっちは夜中に着く3人の迎えをどうするか
で頭が一杯。その時間にこのバスはないのだ。
ホテルへ行く途中で鉄道のオフィスを確認し、7:30まで空いていることをチェ
ック。ホテルでは3人が遅いことを告げ、全部のカギをもらう。このあたりまでは
順調。但し支払いの段になると44万レイと聞いていた額より1割高い。まあイン
フレの国でクレジットカードだからかと一人で納得して済ます。部屋割りは関西組
が到着したときにうるさくならないように配慮する。
そうこうしているうちにもう7時だ。慌てて先の鉄道オフィスに行き切符を買おう
とするが、まずインフォメーションカウンターでその列車の有無を聞いて来いと言
われる。ところがそのカウンターの人はどこかに行っていて不在。何度か発券カウ
ンターに足を運ぶが調べてからの一点張り。仕方が無いので待つこと20分。やっ
と出てきた案内嬢に聞くと、朝のルセへの便はないとのこと。12時発でルセまで
行き乗り換えてヴァルナには夜遅く到着する列車しかないと言う。仕方が無いので
それを買おうと発券カウンターに行くが明日の分を売るのはもう遅いと言われてす
ごすご退散。明日直接駅に行って10時から開く窓口で買うしかなさそうだ。
ホテルに戻ると7時半で、みんなと約束した食事に出かける時間。着替える間もな
くそのまま出ることにする。その前にホテル前にいたタクシーの運ちゃんに、夜中
の空港への往復(空港での待機を含む)を$40で交渉し、11時に迎えに来ても
らうことにする。昼間で片道$15位らしいので、深夜でこの値段ならまあまあだ
ろう。何せ女3人だし無理はできない。
夕食は結局ピザハット。腹一杯食べて1人700円程度で、みんなご機嫌。9時半
から簡単なミーティングを行い、翌日のスケジュールとトレキャンについて、また
心構えなどについて手短かに話す。みな疲れていそうなので早々に解散。
11時に迎えに来た車はおんぼろだが運転手は人が良さそう。片道20分の運転中
いろいろな話をして打ち解ける。空港に着いてみると、23:55の到着予定が遅
れて0:35になっている。仕方が無いので飲み物をおごってやって待つこと1時
間半。その間しゃべりまくっていたが、話のネタも尽きたころ3人が出てきた。買
っておいた水のペットボトルを1本ずつ渡し車に乗り込む。何事もなかった3人に
大変だったことを少し話しかけるがすぐにやめる。まあみんな無事にたどり着いた
のだから良しとしよう。明日からも悩みは多い。
・朝、ホテルから駅までどうやって行こう?
・主催者へ電話を掛けないと18時に駅に迎えに来ることになっている
・主催者と落ち合えなかったら、次の日のブルガリアカップの情報はどうするか。
 その前に宿がどこなのかも分からないままで、たどり着けるのか?

7月1日
満足な朝食後、フロントでノルト駅までのバスを教えてもらう。散歩がてらバス停
を確認にでかける。歩測でちょうど275mだった。10時過ぎにホテルを出てバ
ス停までは順調。バス停では待っていた行列の人にチケットを買って来ないと駄目
だと言われたが、ちょうど該当番号のバスが来たので強引に乗り込み中でまとめて
払う。タクシーに比べればただ同然だ。降り始めた豪雨の中、駅に到着。駅の建物
に入るのに入場料を取られる。
1ヶ所にみんなを集め切符購入に走る。11人分でお金が足りないといけないので
銀行で降ろしたばかりのドルを沢山持っているひろみちゃんに同行してもらい、ま
ずインフォメーションへ。少し並んで待たされてから「ヴァルナ」と言うと、1番
オフィスで買えと言う。構内を回って1と書いた窓口へ行くとそこではなく、外へ
出て右に行ったところの1番窓口だと教えられる。やっと正しい窓口にたどりつき
ルセ経由とゴルナ経由の調べていった時刻表を見せたが、ルセからの直通しかない
と言われて仕方なくそれにする。11人分の料金を聞いて支払う段になると、ドル
もクレジットカードも駄目だというので両替所に走る。ひろみちゃんから$150
借りて自分のドルを足し、5cm厚のレイの札束(280万レイ)を手にする。お
札をトランプのように1枚ずつ重ねながら、「ワンミリオン、ツーミリオン・・」
と数える様は壮観だった。札束をお腹に抱えるように持って再び窓口へ行き、11
枚の発券を頼む。今や懐かしのドットインパクトのプリンタで、ジーコ、ジーコと
1枚ずつ打ち出したものに、手書きで記入する作業のために後ろに列ができてしま
った。
みんなと相談したら、昼食はルセでということになり列車に乗り込む。ところが空
いている席はわずかしかなくて右往左往していると、ある人に教えられてチケット
に書いてある予約席の番号に気づく。見ると既にそこには人が座っていてチケット
を見せて予約席だと言ってもどこうとしない。仕方ないので外にいた係員に言って
排除してもらった。そして無事に着席。
ルセ手前の国境駅のギルギュウで乗ってきた警官に自分の荷物を指差され、開けろ
と言う。開けるとちらっと見てから「ガンは持ってないか」と聞かれた。うーん、
これも初体験。ルセで降りると全員のパスポートを回収される。薄暗いホールで待
たされるが、仕組みが推測でしか分からないのであまり気持ちが良くない。待って
いる間、タクシーの運ちゃん達に何度も誘われる。列車をやめて、直接目的地に行
かないかと言って聞かないのだ。断り続けている間に、やっとパスポートが返却さ
れ、列車の時刻を確認してから食事に出る。駅前に出るとレストランらしきものは
なく、再びタクシーの運ちゃんに2km離れた街に行けばレストランがあるからと
誘われる。断りながら歩いていると、何と駅の建物の中にレストランを発見する。
庶民的なキャフェテリアという感じで、適当なメインディッシュにデザートとパン
そしてビールをつけても170円程度。ヨーグルトのかかったお皿は評判良くなか
ったが、安いことには満足。
時間になったのでプラットフォームに向かうが、最初に思っていた側は行き先表示
が違う。戻ってきて元のプラットに上がると表示は違うが車体には「BapHa」
と書いてある。これだとばかり、みんなに声を掛けて乗り込み席を捜す。3ヶ所に
分散して何とか席を確保する。定刻1分前くらいに音もなく発車。
検札のことを考えて1枚ずつチケットをみんなに配って回る。1枚余る! えっ、
何で? と調べて回ると金澤君がいないことが判明!! 乗り損なったようだ。
いろいろ聞いてみるとレストランからホームに移動する時が、彼を見た最後のよう
だ。ここで戻るべきか行くべきか頭が回転を始める。いろいろ考えた結果、このま
まヴァルナまで行くことにし、みんなに心配しないように伝える。金澤君の性格か
らしてそのままそこで待っているというよりは、自分で何とかしようと動くことの
方が考えられるので、下手に動いてすれ違いになることを避けねばならない。自分
達自身さえヴァルナ到着後の様子が分からないのだ。とはいえ、先の心配ばかり頭
にあって、乗車時の確認を怠ったことには悔いが残る。
座るとさすがに疲れが出てうとうとしていると、突然金澤君が現れる!! 聞くと
タクシーで追いかけて来て2つ目の駅で追いついて乗ったそうだ。すごい! レス
トランで昼食後、プラットに移動する途中で有料トイレに寄っていて、プラットを
探したりしている間に列車が出てしまったということだ。つきまとっていたタクシ
ーの運ちゃんにタクシーで追いかけるという提案をされ、$18に値切った上で、
時速100kmで追いかけてきたというのだからすごい。まあ何はともあれ本当に
良かった。こんなにほっとしたことはない。
車内では大嶋君が現地の人にもてたり、合気道をやっている人と話をしたり、将棋
やオセロに興じたり、いろいろなことがあった。夕方になり車窓から広大な景色を
眺めながら、地形を観察したりしてみんなハイテンションになってきた。「早く山
に入りたい」という言葉が聞かれたのもこの頃からだった。
21:30にヴァルナ着。約束の時間から3時間半も遅れたので誰もいない。唯一
知っているJWOC事務局?の電話もルセから掛けたときは誰も出なかった。たぶ
ん5日からの電話なのだろう。さてどうしようと見回していると、駅の柱に貼って
ある小さなポストマークを発見する。これは万国共通で、小さくても良く目立つ。
「JWOCの宿はZORAホテル」とだけ書いてある。沢山待っているタクシーの
運ちゃんに聞くと11人だと3台で$60だと言う。一応保留しておいて、みんな
を待たせ、ZORAホテルに電話が入れられないものかと電話番号調べを始める。
その様子が分かったのか、あるおじさん(今もってどういう人かわからない)が、
テレフォンカードがあれば調べられると、片言の英語で話し掛けてくる。何度かト
ライしてくれるが、BulFonではうまくいかず、別の電話会社の公衆電話のところに
行き、ちょうど終ったばかりの女性に頼み込んで、その人のカードを使って番号を
聞き出す。やっと分かった番号でZORAホテルに電話するとやっと主催者につな
がり、30分で迎えに行くという。
もう10時を回っていたので、待っている間に腹つなぎのサンドイッチと水のペッ
トボトルを調達することにする。先のおじさんに頼んでヤミの両替屋に$40だけ
両替してもらいまとめて支払う。ドルのままだと全然使えないのだ。
やっと主催者の車が到着し、分乗して30分後にホテルに入る。23時半だ。みん
な眠いというので、用意してあった夕食を無駄にして、そのまま寝ることにする。
2人/1部屋に部屋割りして取り敢えず落ち着く。主催者の人からCCを受け取り
明朝のスケジュールを聞く。6時半朝食の7時出発だ。
寝る前に集まってもらいスケジュールを確認する。両替、洗濯、日用品購入、ポス
トなどなど、こちらが調べようと思っていることが、そのまま質問で出てきたので
しばらく待ってもらうことにする。みんなが心配している懸案事項をリストにし、
主催者やホテルの人に聞いて回る。ホテルでは両替不可、洗濯機はなし、が判明。
情報伝達をスムーズにするために、自分の部屋の廊下の壁に(i)マークを付けた
掲示板を作り、分かった情報を張り出すことにした。後は各自の部屋の扉に名前を
貼って回って今日の仕事は終り。1時半。

7月2日
6時半に朝食後、バタバタと準備をしてバス停に急ぐ。7時15分位に他チームと
共に出発。ヴァルナ駅前を通り延々と1時間揺られて会場の空き地に到着。配られ
たCCには、1:06:00というような表記のため、午後1時かと思っていたが
会場で念のため聞いたらトップスタートの9時半に足すのだということを知り、あ
わててみんなに伝える。終了が遅くならないようにスタート順を男女ともそれなり
に考慮して配布。CCにコーチの分がなかったのでW20の1枚(山田さんの分)
を使わさせてもらうことにする。スタートまでの距離を確認してから再度スタート
地区に行き、早いスタートの狐塚、増山を待つ。無事にスタートして行ったのを見
てからみんなのところに戻る。位置説明の一覧を出しておかなかったので、何人か
はCCに写せないままスタートに行ったらしい。申し訳なかった。あとで分かった
ことだがこの大会では地図に位置説明が付いてなかった。写さなかった人は、丸の
真ん中を目指すのみで、番号確認もできなかったらしい。最終スタートの自分がス
タート地区に移動する時間までに誰か早いスタートの人が帰ってこないかとゴール
レーンを見ているが誰も来ない。ぎりぎりまで待ってからスタートへ向かう。スタ
ートでは赤いCC(女子用)だったが気が付かれずに枠を進む。スタートして地図
置き場でW20の地図を取ろうとすると、役員が来て「男はこっちだ」と言う。赤
いCCを見せて「私は女だ」というと変な顔をしていた。きっとびっくりしたこと
だろう。ちなみにこの時はサン・スーシのトリムを着ていた。
1番へは途中の分かりやすいオープンの帯までラフコンでひた走る。広葉樹林で木
の間隔が広い上、地面が固いのでどんどん走れる。あっという間にオープンまで来
て1万分の1だったことに気が付く。それにしても歩測が少な目で着いてしまった。
フラットな部分の直進は楽勝なのだが(やぶっぽいところや倒木がなくて精度が保
てる)、最初の急斜面で外す。上から枝尾根にあるアリ塚へのアタックだったが、
走り込んできた勢いで甘くアタックしたら隣だった。急斜面をコンタリングしよう
とするが、表面が固いのでスパイクのない靴だとずり落ちてしまう。何とか移動し
て登り直してかなりのロスをしてしまった。気を引きしめて慎重になったら、地図
との対応が驚くほどできるようになり、あらためて地図精度の高さに驚く。中盤以
降は快調に進み、まずまずの感じでゴール。みんなも自分のペースで回って来れた
みたいで、ミスがそれなりにあっても全く対応できないという人がいないのでひと
安心。むしろ直進が思ったより当たるので自信を持った人もいて初日としてはとて
も良い感じだ。
ヘアバンドや靴などが安く売られていて、みんな早速仕入れる。1時半に最後の選
手がゴールしたので、帰りのバスへ急ぐ。早々と終った他国の選手たちが我々を待
っていてくれる。
再び1時間バスに揺られホテルに戻る。主催者から、2日目がブルガリアカップで
3日目がトレコースでアレンジしたけどそれで良いかと聞かれる。ブルガリアカッ
プは隣接場所を3日間使うため(ゴールが同じ)マップ返却がなかったことを考え
て、2日目をトレコースに変更してもらえるように交渉する。17:15に八尋組
の4人を迎えに駅に行くので一緒に行って欲しいというのと、その時までにどのト
レコースに入るか(バスのアレンジの都合上)を決めてくれといわれ地図を渡され
る。ちらっと見て良さそうなものに見当はつけたが詳しく説明を読んでいる暇はな
い。教えてもらった銀行に、みんなを連れていって両替させないと身動きが取れな
い。2kmくらいの道のりをお絵描きOよろしく書き写して出発。何とかツボらずに
到着。ゴールデンサンズリゾートの真ん中にあり、いろんな出店もある。ところが
銀行に着くと、シャッターが半分降りていて4時で閉店だ。30分遅かった。仕方
ないのでクレジットカードのある人は、24H稼働のマシンでキャッシングするこ
とにした。暗証番号をなかなか思い出せない人もいたが、何とかみんなレバを手に
する。17:15の待ち合わせ時間が迫って来たので、海岸の方へ行ってみようと
いうみんなと別れてホテルに急いで戻る。ちょうど約束の時間に戻り、着替える暇
もなく主催者の車で駅に向かう。車のなかでトレコースを決める。バスさえアレン
ジできればOKとのこと。これで確定するよといわれてOKと言ったものの、駅に
着くまでの間に、ブルガリアカップの3日目の地図がJWOC大会で使うものに大
変似ているというブリテン3の説明を思い出す。やはり3日目はブルガリアカップ
にしよう。再度変更を申し入れる。"I have changed my mind." を何度言ったこと
だろう。約束の18:05の列車が到着し、ポストマークのボードをもって迎える
が誰も来ない。主催者はその足で空港に、別の国の選手を迎えに行くというので、
一人で残ることにした。ただし、ZORAホテルへ行けるバス乗り場を教えてもら
った。最終を聞くと22時だそうだ。次の電車は19:05なので、ふらっと駅前
を歩き庶民的なカフェレストランに入る。ビールを頼むと中ジョッキの生が30円
くらいで飲める。ひとしきり街を歩く人を眺めながら時間をつぶす。再び駅に戻っ
た頃から雨が降りだし、やがてものすごい雷雨になった。傘を持ってきていないの
で、駅の構内に足止めになる。
結局19:05にも乗ってなくて我々と同じ20:30の列車の公算が高くなる。
それからホテルに戻ってからのミーティングでは遅すぎるので、ZORAホテルに
電話を入れ、自分達だけでミーティングをやるように君香に頼む。ボケっと時間を
つぶす。コーヒーを売っているスタンドを見つけたので頼むことにする。キリル文
字で3つの種類が書いてあり、発音はできるが内容は全く分からない。適当に 3番
目を発音すると何の疑いもなく出てきた。香りがなくただざらざらしたコーヒーだ
った。自分達の列車の長旅の時は水が不足していたので、念のためペットボトルの
水を買い込んで4人を待つ。やっと到着する。思ったよりみんな元気そうだ(ただ
山田が元気だっただけかもしれないがそう見えた)。水も大丈夫らしい。教えられ
たバス停に直行すると、前日に付きまとわれたタクシーの運ちゃんは誰もやってこ
ない。5人分のバス代を払うがとても安い。ZORAホテルは終点なので安心して
少しうとうとする。22:10にホテル到着。前日より1H早い。部屋に行く前に
夕食を取ることにする。こっちも腹ぺこだ。4人のパスポートを預けて部屋へ案内。
大半の人が既に寝ている。君香がやって来て部屋のカガミを壊してその対応をホテ
ルの人とやっていたら9時になり、みんな寝始めたのでミーティングができなかっ
たという。やはり2日目ともなると時差ボケもあり、みんな疲れたのだろう。
カガミの方は部屋のなかにある1mくらいのもので、それを止めている上部のボル
トに、歩ちゃんが洗濯物を掛けたら外れて壊れたもの。ホテルからは弁償するよう
に言われたらしい。そんなに簡単に外れるのは古いからだと言いたいところだが、
そんな変な応力が掛かる場所でもないので、ちょっとクレームを付けるには弱い。
いくら払わないといけないか歩ちゃんは心配していた。
トレコースでのコーチ指導の希望者は、狐塚、増山の2名+αだと君香から聞く。
主催者からトレコースへの足はOK、地図は翌朝と知らされる。
やっとシャワーを浴びてそれまでの情報を整理していたら、また1時過ぎになって
しまった。やっとコーチが2人増えたので明日からは楽だろう。

7月3日
朝食前に海岸まで散歩し貝殻を拾う。さすがに早朝は誰もいない。ホテルに戻ると
主催者がロビーにいたので地図のことを聞くと、忘れていたようであわてて手配し
てくれる。朝食後に無事に人数分受け取る。但し全ポが1枚であとは白図だ。やっ
と前日もらった説明書を読んだら、選んだトレコースはブルガリアカップの近くで
やはり1Hくらい掛かるらしい。もう少し近い場所もあったがたぶんそのコースが
正解だろう。バスは日本チームの貸し切り。これなら多少終りが遅れても誰にも迷
惑は掛けないが、一応終りは1時にしてもらう。オープンのはずれの独立樹の下に
陣取り、みんなが準備をしている間に入江君と全ポを見て推奨コースを考える。良
さそうなレッグをつないでいたら、2人ともまったく同じになってしまった。考え
ることは同じということか。入江・狐塚、尾上・増山、八尋・高橋以外は、それぞ
れ一人で山の中に入って行った。
歩ちゃんはそれまでも直進精度は問題なかったので、自分が初日に感じたテレイン
に対する見方をベースにして、チェックし易いもの、し難いものを中心に解説して
いく。いかに自分のわかるCPを組み合わせてプランするかが最大の課題なので、
必要な材料を提供しながらランオブする。時間目一杯使って練習し、戻ってから他
の人たちの様子を聞く。初日と2日目でみんなそれぞれうまく行った部分と失敗し
た部分が経験できたようだし、遅れ参加の増田、山田もキャッチアップしてきてい
るようなので安心した。うまくできて自信を持つことと、失敗して慎重になろうと
思うことの両方が必要だと思っていたので、まずまず思惑通りに進んでいるようだ。
予定時間を過ぎても八尋組が戻ってこなかったので少し心配したが、やがて戻って
きて帰路につく。
3時前にホテルに戻り夕食までは自由とする。大半の人はゴールデンサンズに両替
や買い物に言ってしまう。海岸にも行って入江君はひと泳ぎして来たらしい。こっ
ちは洗濯と選手の状況のまとめをする。寺嶋君にも電話を入れ、選手が順調に対応
していることを伝える。明日、やっと日本を立つとのことだ。
夕食後のミーティングでは、全員に2日間を通じての対応状況を話してもらい、お
互いの参考にしてもらった。1H掛かってしまったのと、翌朝がまた早いのでルー
ト検討などはやらずに解散する。前夜は夜遅い到着だったので、入江・増田で同室
になってもらったが、やはり選手同志の方が良いだろうということで入江君が狐塚
君と入れ替わって私の部屋に来ることになった。
夜、山田が腰が痛いと言って来る。たぶん前日まで思いリュックをしょって来たの
と固いテレインを走ったせいだとは思うが、念のため軽く腰を押してやる。そうい
えば番ちゃんも今日のレースは体がだるいと言っていた。みんな少し疲労が出てき
ているようだ。無理はさせない方が良い。
歩ちゃんのカガミ代は3万レバ(2400円)ということで、思っていたよりずっ
と安くてひと安心。本人もホッとしていた。今回はM20とW20のディスクリプ
ションを一覧表から拾って作成し貼り出した。CCは当日配布なので自分の紙に書
き写して行った人が多かった。八尋さんに主催者とのスケジュール調整の仕事を依
頼し、引き受けてもらってだいぶ楽になった。

7月4日
5時半に起きて6時朝食。7:15出発。初日と同じ場所に到着。CCをもらうと
入江M21A、八尋W21E、尾上M50になっている。また終了時刻を考慮した
走順とする。今回は自分が早くゴールできそうなので、最後の金澤君がスタート前
には帰れそうで、荷物番は問題なさそう。だいぶテレインの様子も分かって来たの
で、キロ8分ですんなり回って来ることができた。ゴール後、ビデオカメラを持っ
てラス前のポストに向かう。何人かの日本選手を撮影している内に、ラス前々まで
来てしまう。ちょっと深くテレインに入り過ぎたのでそこまでにして戻る。選手の
様子としては、君香が踏み込んで少し足を痛める。山田は地形の把握が不十分で飛
んだ。番ちゃんは今日は体調良好で走り過ぎて直進で吹っ飛んだ。確かに自分も初
日に走った時、どんどん走れるので地図読みが追いつかないという状況があった。
必要なところはちゃんと地図読みを入れてめりはりを付けることの大切さをコメン
トした。歩ちゃん、純ちゃんともにミスは犯しているが、良いレッグもあったとい
うことなのでホッとする。ひろみちゃんも同様のようだ。うまく行ったレッグがあ
るのなら、あとは如何に自分を制御して進めるかだ。
今日は最終日なので表彰式がある。小さな子供たちも表彰されて嬉しそうだ。この
あたりは万国共通というところか。
バスで帰る頃から雨が降り出し、ホテルに着く頃はどしゃ降り。今日こそは海へと
思っていたみんなは残念がる。替わりに加藤君?が呼びかけて、4:30から選手
たちの自発的なルート検討会が始まる。男女別になったので、自分は女子チームの
方へ参加する。女子だけということでラフな格好で考えていた人も、私が出るとい
うことで身繕いする一幕もあった。各レッグごとにラップの比較もしながら、かな
りみっちり検討を進める。私もところどころで口を挟みながら7時過ぎに終る。女
子が終ったので男子の方を覗くとまだ途中で、結局夕食の7:30まで3Hやった
ことになる。選手たちのやる気が感じられた。
明日はいよいよJWOCの宿に移動だ。移動は午後になるということだけ主催者か
ら知らされたので、午前中は自由時間とする。いよいよビーチ行きだ。明日ならま
だ本番まで間にもう1日あるし、気分転換にも良いだろう。ただあまり長すぎると
日光の直射は疲れるので、12時までには戻って来るように徹底をした。

7月5日
朝になると日本チームの移動バスは2時だということが分かる。まあ12時までと
いう話はそのままで良いだろう。自分もみんなと一緒に行こうとしたら、電話代や
デポジットボックス代のことで、フロントで呼び止められて追走することになる。
海に入ってはしゃいでいるみんなをしっかりビデオに収め、アイスクリームを食べ
て一足先にホテルに戻り、チェックアウトの準備をする。
昼食後、みんなのカギを集めてパスポートの返却を依頼する。自分以外は返しても
らえたが少し待たされる。やがてホテルの人が我々の部屋の中で、火でじゅうたん
に穴があいたところがあると言ってくる。確認のために付いていくと確かに穴があ
いている。その部屋だった金澤君に尋ねると最初からそうだったという。ホテルの
人にその旨伝え、我々は全員タバコも吸わないし、火も使っていないと話すと、や
っとパスポートを返してくれた。
1台待たされた後、バスで移動する。入江君の地図では、ヴァルナ寄りの海岸とい
うことだが、どんなところか気になる。今までの所よりは良いはずだと思いつつも
到着までは様子が分からない。その内にバスがリゾート地区に入り、周りにお店が
見え始めるとみんなから歓声が上がる。やがて海岸沿いの行き止まりのホテルにバ
スが到着。どこでチェックインすれば良いのか分からず、みんなを待たせてホテル
のフロントへ行く。聞くと少し手前にあるJWOCのオフィスで、どのホテルか聞
いて来いと言う。やっとオフィスを探し当て、JAPANというと人数分のプログ
ラムなどの入った紙袋とホテルの部屋割りカードをくれる。入江、八尋と一緒に行
かなかったら手が足りなかったところだ。入金チェックもするように言われたので
順番を待つ。部屋割りを入江君と決めて、先にみんなを案内してもらう。部屋の人
数が333322なので、必然的に322が女子部屋になる。
入金確認では、800マルク足りないので支払えと言われてそんな筈はないと一緒
に一つ一つ確認していくと、途中から主催者側で間違いに気づき、結局逆に600
マルク戻ってきた。
このオフィスには各国の国旗を貼ったレターケースが用意され、日本からの応援メ
ッセージや、日々の情報などがここに入れられる。この会期中、何度もこの引き出
しを覗きに行くことになる。
部屋に入ると3人部屋だがベランダがあり洗濯物が乾せる。それまでの場所より遥
かに良い。但しシャワーにバスタブがないのと洗濯機、冷蔵庫のたぐいがないのは
同じだ(と思っていたら女子部屋には冷蔵庫があることが後になって分かった)。
夕食までは、これから1週間の生活をするための準備のための自由時間とする。早
速両替や郵便局やお店の場所確認に行った人も多かった。
夕食が面白かった。相変わらずトマトのある野菜のお皿の他に、もう一つちょっと
したお皿があって、飲み物とパン。それまでのホテルもそんなものだったので、み
んなせっせと食べる。と、ひとしきりしたところで、お肉のメインディッシュが出
てきたのだ。既にお腹いっぱいの人もいて戸惑った顔が忘れられない。ところが今
度は飲み物のお替わりはいるかと聞いてきたウエイトレスにYesと言うと、これ
は別チャージなのだ。これは評判が悪かった。
夕食後、ひろみちゃんの具合が悪いという報告が八尋さんから来る。行ってみると
ぐったりしている。疲れと軽い日射病のようだ。軽く冷やして楽にさせ、少し寝る
ように言う。その後ひと寝入りしたらだいぶ楽になったようだ。良かった。
夜8時半からを定例ミーティングとし、初日はもらったばかりのプログラムを読ん
で要点の解説を行う。今日は寺嶋君が到着するので、到着次第、再度集まることに
した。他の便と一緒のバスになったので予定より少し遅かったが、やっと団長が合
流し、これで全員揃った。寺嶋君からは団長としての言葉と、リレーのチーム編成
の方針が話された。いよいよ本番だ。

7月6日
モデルイベントの会場に着くとSport Identの試用コーナーがある。テープで仕切
られたエリアの一つの隅でチップの貸し出しと回収を行っている。そこにはリセッ
トとクリア用のボックスもおいてあり、そこから入って3ヶ所のパンチ台で試せる
ようになっている。いろんな指にいろんな挟み方をして使いやすい持ち方を試す。
中指にはめて人差し指との間で持つのが良さそうだ。何よりも小さくて邪魔になら
ないのと方向性がないのが良い。番ちゃんは地図とコンパスも一緒に持ってきて試
し、サムリーディングしたままパンチできると喜んでいた。ひとしきりSIチップ
を練習した後、今日は特に誰を見るでもなかったので、ビデオカメラを持ってテレ
インに入る。みんなの来そうなコントロールに先回りしてアプローチしてくる様子
を撮影する。あとは自分で実況しながら撮影して回った。選手はそれぞれ本番前の
調整を思い思いにやっているが直進が結構当たるので、みんなそれに頼り過ぎてい
るようだ。まずい! もっとプランをしっかり立てるようにさせなきゃ!
宿に戻ってからプレスセンターに行く。3台インターネット端末が自由に使えるよ
うになっており(一応時間の予約をするようになっていたが、実質上は少し待てば
使えた)、15分140円を自己申告でサインするようになっている。早速触って
みたが3台にはそれぞれIE、ネットスケープ、アウトルックと3種の異なるメー
ラーが用意されていた。もちろん日本語変換がないので、日本に送るメールは英語
かローマ字になる。試しに自分のホームページを表示させてみたら文字化けだらけ
だった。
夕方になりいよいよ開会式へ出発だ。暑かったが全員JAPANウェアを着込んで
バスに乗る。数台のバスをパトカーが先導して進む。ヴァルナの町に入ると信号が
消えていてすべての交叉点に警官が出て交通規制が敷かれている。反対側の車線は
大渋滞だ。こっちはノンストップで会場へ。道路には横断幕も見られる。バスが着
いたところには、きれいな民族衣装を来たかわいい女の子がJPNのプラカードを
持って待っている。思わず金澤君から「か〜わ〜い〜い」との声があがる。ひとし
きり町中の道路を行進し、開会式場の野外劇場に入る。ここがまたすばらしくて、
こじんまりした野外劇場で、ステージと観客席の周りは緑のつたでぎっしり覆い尽
くされている。一つずつ国名が呼び出されて入場する。周りの観客が声援を送って
くれる。日本は16名のフルエントリーなので壮観だ。用意された席に横一列に並
んで座る。どこからともなく水鉄砲の水が飛んできたのには閉口したが、やがて式
が始まる。主催者の役員の挨拶が済むと地元のいろんなスポーツグループの演技が
始まる。歌あり踊りありで、最後には空手の演技も披露されたのには驚いた。
ホテルに戻ると既に7時半で、夕食を食べずにリーダーズミーティングが始まる。
最初なので4人全員が出席する。結構細かい質疑応答があったが寺嶋君のコメント
ではこんなにちゃんとした大会はないという。今までは結構いい加減なのが多かっ
たそうだ。60人のボランティアで3年前から準備したというだけのことはある。
時間がずれたために9時半からミーティングを開き、明朝のスタート時刻別のバス
の配車などを確認する。ひろみちゃんと山田のマッサージをする。

7月7日
オフィシャルは第1バスで行く。バスは発車した後Uターンするので、最初に日が
照っている側の方が涼しいのだが、みんな良く知っていてそちら側はみんな塞がっ
ている。会場に着くと広々とした空き地で、一角にブタが放牧されている。少し斜
面を上がったあたりに陣取り、木の枝に日の丸を掲げる。立派なウォーミングアッ
プ用の地図が用意されている。
地図はハガキ大の立派なもので、競技会場を含む500m×1kmくらいのエリア
が開放されていてコントロールが4個設置されている。日本ならミニレースやナイ
トが十分できるくらいのものだ。サンダル履きのまま2ヶ所回ってきたが、林も白
く地図の精度も申し分ない。各国の選手が思い思いに調整していた。日本選手はそ
ういうウォーミングアップをしたことがないので、疲れを残さないようにちょっと
だけ中に入って来た人が多かったようだ。
スタートまではその地図のオープンの端のところなので、ほとんどの人は林の中か
ら縁に沿って行っているようだ。入江君から5分で行くという情報が入って来る。
状況を把握して、寺嶋、八尋の2人はタープを持ってゴール地区へ移動して行く。
日本人女子で一番早いスタートを引き当てた番ちゃんは、設定したタイムテーブル
通りにストレッチやウォーミングアップをやっている。蚊避けスプレーをするのを
忘れていたら早くも刺されてしまった。時間になったので番ちゃんとスタート地区
へ移動する。彼女の1分前が男子トップの加藤君だ。二人とも驚くほど緊張してい
ない様子なので自然に任せる。スタート地区には給水があり、4分前にSIチップ
のクリアとチェックをするようになっている。いよいよプレスタート。番ちゃんな
ら80分くらいで帰ってくるといいなと思いながら送り出す。

  9:08 加藤    9:09 番場
  9:46 大嶋    9:23 増山
  9:57 増田    9:57 横江
 10:01 金澤   10:14 山田
 11:08 狐塚   10:42 高橋
 11:10 田崎   11:04 塩田

選手のスタート時刻を見ながらシートを敷いて陣取ったところと、スタート地区を
往復して次々と選手を送り出す。2ヶ月間頑張ってきた選手それぞれに、精一杯の
レースを願う瞬間だ。かと言ってスタート枠ではあまり大きな声で声援できない雰
囲気があった。荷物を広げたままスタートして行った選手がいて困惑した。だいた
いそれらしい荷物をまとめて、ゴールへの配送をしてもらえる白テントのところへ
持って行く。人数分全部やると結構大変だ。次の日からは選手にそれぞれ持って行
ってもらうことにした。無事に選手を送り出したら周りにあまり人がいなくなった。
ゴール行きのバスに乗って待っていたがなかなか発車しない。その間、荷物運送の
ミニバンが何台か出て行きそれに乗って行った人もいる。後で聞いたらそれに乗っ
ても良かったようだ。結局最終スタートを見ていたオフィシャルが駆け下りてきて
乗り、バスは発車した。
バスはどんどん海岸に近づいていく。もしかしてゴールは海岸? と思うまもなく
本当に砂浜にゴールレーンの設置されているところに到着。メインボードには名前
に国旗の付いたリザルトボードが次々と貼り出されている。日本チームを見つけて
いく。暑い砂浜なのでタープの中もあんまり居心地が良いとは言えない。ビニール
袋に入ったランチと水のペットボトルが支給されている。あまりおいしいとは言え
ないきゅうりをかじりながら遅いスタートの選手のゴールを応援に行く。遠くに見
えたJAPANトリムが一旦砂浜のこぶに隠れ、再びその影から現れる。ラスポは
そのこぶのこっち側だ。増田が帰って来る。ラスポからのダッシュが凄い! あと
はあれっ? 山田がまだだ。結局かなりぶっ飛んで2時間オーバーで帰ってきた。
相当ショックだったことが感じられるがこれで終るような山田でないことはみんな
が知っている。2日目以降に期待しよう。ひろみちゃんが帰ってきた。ひろみちゃ
んも歩ちゃんも2時間を切っている。上出来だ! 番ちゃんは83分台だが10分
近くミスをしているようだ。150%強くらいだろうか。できれば80分を切って
欲しかった。君香は不満だろうがまずまずの結果。純ちゃんと狐塚が最後に帰って
来てクラシックは終った。二人とも長丁場でかなり痛めつけられたようだ。

 M20 11700m 480m  W20 7200m 300m
 1 Hramov Andrei  69:18  1 Hulliger Regula  52:57
 111 田崎   109:25  107 番場     83:52
 122 加藤   114:49  116 横江     97:17
 132 大嶋   126:25  121 高橋    115:42
 134 増田   128:15  122 増山    116:08
 136 狐塚   135:30  125 山田    122:42
     金澤(P)104:13  127 塩田    135:28

男子では金澤君、田崎君が健闘と思っていたら、金澤君はペナになってしまった。
それにしても男子の1位は驚異的だ。4%以上のアップにもかかわらずキロ6分を
切っている! 
体を冷やしに海に行った歩ちゃんが足を切ったという報告が入る。一瞬青ざめて行
ってみると何かを踏んだときに切ったようだ。本部テントの中で消毒してもらい、
抗生物質の粉をかけて防水テープを貼る。この辺りは寺嶋君がいて心強い。明日か
らのレースが走れないのではと半泣きで落ち込みかけていた歩ちゃんに、担当の先
生が大丈夫だと言ってくれたので持ち直した。靴下を履かせて砂が入らないように
し帰途に着く。この後毎日、寺嶋君が消毒し直したお陰で傷口は驚くほど回復し、
テーピングで押さえて残りのレースも無事に走ることができた。歩ちゃんは出てく
るときに先輩のやっさんに、何かしでかす筈だと言われて来たようだが、カガミの
破損だけでは厄払いできずに足まで切ってしまった。まあその後も走れて不幸中の
幸いだったので良しとしよう。
リーダーズミーティングでは、給水が足りなくなったことのお詫び、指定されたバ
スへの乗車の徹底などが話された。全体としては順調に運営されている。
レースの正式結果が出て番場はトップ比158%、横江183%、高橋218%、
増山219%と続く。日本的に見れば初参加の緒戦におけるこの番場の成績は賞賛
に値するものだろうし、2ヶ月前の増山を知っている人にとっては、この難コース
を2時間以内で完走したことは驚異であろう。しかし世界とのレベル差は限りなく
大きい。いったい選手たちはこのことをどう受け止めたのだろうか。
自分が今目指しているオリエンテーリングの完成形をもってしても、その遥か後ろ
に続いている道のりは見えないかもしれない。だけどそこにある何かを求めて挑戦
し続けていって欲しいものだ。
夜は七夕なので、廊下に紐を張って願い事を書いた短冊をつるした。誰かが七夕の
由来と共に、Make your wish ! と書いて短冊を置いたら、他国の選手もいろんな
ことを書いたりして、ちょっとした交流ができて良かった。 翌日にお陰でAファイ
ナルに残れましたと言って来た人もいた。

7月8日
ショート予選は午後なので朝は少しゆっくりできる。1日目の結果などを日本にメ
ールする。前日のクラシックの優勝者のルートが貼り出されているので写す。線の
微妙な曲がりを注意深く見ると驚くほどその意図が分かり、かなり綿密なプランお
よびナビゲーションで進んでいることが分かる。
さていよいよショートの予選だ。全員Bファイナルには残って欲しいところだ。予
選は3人ずつスタートするので、スタート自体は短時間で終了する。

 14:03 増田   14:02 番場
 14:31 大嶋   14:22 高橋
 14:45 加藤   14:38 横江
 15:03 狐塚   14:50 増山
 15:29 金澤   15:00 塩田
 15:35 田崎   15:08 山田

スタート地区では送電線のオープンの脇に陣取る。寺嶋君が歩ちゃんのテーピング
をしてからゴール地区に移動する。今日のウォーミングアップ用の地図はA6サイ
ズくらいある大きなものだ。コントロールも8個もある。但し今日はオープンの近
辺はいばらなどもあり、少々やぶっぽいようだ。今日はみんなが自分の荷物を移動
エリアに運んだので、ほとんど何もすることはない。スタート手順も手慣れたもの
で、ただ見守っているだけで淡々と進んだ。スイスのコーチがいたので昨日は優勝
おめでとうと言ったら笑顔を返してくれた。女子の方が早目に終ったので、先に日
の丸やシートを撤収し、入江君が戻って来たらすぐにゴール地区へ移動した。
ゴール地区に着くと、さすがにショートだけあって早々とみんなゴールしている。
山田がやって来てたぶん通りましたと言う。前日の不本意なレースの後だったので
その報告を聞いてホッとする。リザルトを見ると番ちゃんと山田が20〜40位の
中間くらいのところで問題なさそう。特に番ちゃんはこれでも数分のミスを犯して
いるということで、Aファイナルも夢ではないことを示してくれた。
男子はと見ると大嶋と加藤が40位手前のぎりぎりのところにいる。そうこうする
うちに何人か入って来て、ついに2人共42位あたりまで落ちてしまった。残念。
遅いスタートの田崎君がゴールして来る。結果的にはタイムの最も良かった大嶋君
がヒート3では44位で落ち、田崎君がヒート1でBファイナルに残った。女子は
先の2人の他、吹っ飛んだ高橋と横江も失格者が多かったために人数枠の後ろに残
り、Bファイナル進出となった。

 Heat1          
  37 田崎 48:09 B   38 高橋 55:07 B
  48 増田 65:26 C   P  増山 97:08 − 
 Heat2           
  42 加藤 48:17 C   32 山田 41:55 B
  P  狐塚 86:38 −   39 横江 69:41 B
 Heat3
  44 大嶋 46:52 C   29 番場 40:59 B
  50 金澤 60:42 C   P  塩田 88:58 −

宿舎に戻って発表された男子の決勝のスタートリストを見るとCファイナルに狐塚
がいない。主催者に理由を聞くとDNQの選手は走れないと言う。JWOCの主旨
から見て、Cファイナルには出させてやっても良いのではと言うと、IOFのルー
ル?を持って来る。確かに明示的にはどうしろとは書いてなくて主催者に委ねられ
ているので、今回はリストに入れなかったと言う。「それはないよ」と言うと(も
ちろん英語で)側にいたドイツチームのオフィシャルが、「Protest(異議提出)
しようか?」と私に聞く。さらにオーストリアのオフィシャルも「過去何年も同様
のケースで走れなかったことはない」と応援してくれる。主催者に頼んで失格者リ
ストを打ち出してもらって、その3人で関係する国をチェックする。結局12ヶ国
19名が対象であることが分かる。そのドイツオフィシャルが他の国のオフィシャ
ルに声を掛けてくれることになった。少し時間が掛かりそうなので「ドラフトは英
語がネイティブの人が書いてね、サインするから」と言い残して一旦部屋に戻る。
寺嶋君にその話を報告し、あとは過去の経緯を知っている寺嶋君に引き継いだ。結
局DNQの3人は、Unofficial C Finalとして遅い時間帯に走れることになった。
この頃になるとみんなさすがに疲れが出始めている。増山さんの足は問題ないよう
だ。君香が肩が痛いと言って来た。筋肉痛でも打撲でもなさそうで、どうも良く分
からない。40肩じゃないかと言って怒らせてしまった。この日はひろみ、山田、
君香のマッサージ。

7月9日
ショート決勝は再び早いスタートだ。6時前にレストランに行き朝食を済ませる。

  9:11 金澤 C   9:14 横江 B
  9:17 増田 C   9:18 高橋 B
  9:19 田崎 B   9:56 山田 B
  9:45 大嶋 C  10:16 番場 B
  9:55 加藤 C  11:36 増山 U
 11:36 狐塚 U  11:38 塩田 U

スタート地区へ行き、ウォーミングアップ用地図を見てびっくり。初日のクラシッ
クの時に途中で横切った道のところなのだ。また、スタート枠がすぐ目の前なので
まったく世話いらずだ。スイスのコーチが選手に真剣な顔でアドバイスしているの
が見える。あのレベルになるとちょっとしたことでメダルが飛んでいくから大変だ。
番ちゃんを見送ったところで時間が空くので、ゴールのビデオ撮影のために残りを
入江君にお願いして早目にゴールに移動する。今回は荷物運搬用のミニバンに乗せ
てもらった。ゴールはクラシックのゴールと同じ砂浜。ラスポは初日のラスポのす
ぐ近くの廃棄船(人工特徴物)に付けられている。少し小高い砂山に陣取りみんな
のゴールシーンをカメラに収める。今日は番ちゃんはミスレース。体力的にも余裕
を残したようで未消化の不満をもらしていた。女子では山田が快調。男子では加藤
がCファイナル4位と面目を保った。

  B 50 田崎  45:18   B 38 山田 38:53
  C  4 加藤  24:26   B 45 番場 44:22
  C 11 金澤  27:06   B 56 高橋 58:07
  C 18 増田  31:51   B P5 横江104:40
  C 25 大嶋  35:30   U    塩田  
  U    狐塚          U    増山

クラシックで優勝してみんなの人気者になったスイスの Regula は、この日も秒差
で栄冠をものにし2冠となった。彼女が引き上げるところを狙って日本人選手が取
り巻き、一緒に記念撮影をしてもらっていた。それにしてもあの小柄な体のどこに
そんなパワーが潜んでいるのだろう?
帰りをゆっくりしていたら、バス停にバスはあるけど運転手がおらず、いつまで経
っても見通しが立たない。八尋さんと主催者のところに行き事情を話したら、やっ
と出ることになった。
宿舎に帰ってすぐにミーティングを開き、翌日のリレーのチーム編成および走順を
それまでの実績とこの大会での適応状況を見て決定し、コーチから発表した。

  Men1 田崎→加藤→金澤   Women1 番場→山田→横江 
  Men2 大嶋→増田→狐塚   Women2 高橋→増山→塩田

女子は何とかリレーの形を作りたいという寺嶋君の意を受けてのメンバーと走順だ。
第2チームもこの大会中ずっと大きなミスなくまとめていた高橋を1走にしてウム
回避を目指す。明日はどこまで他国と戦ってくれるか大いに楽しみだ。あまり他国
のことは分からなかったが、男女ともマケドニアには問題ないとしてアメリカ、ポ
ルトガルあたりに勝てないかなというおぼろげな気持ちを持っていた。
明日は、寺嶋、入江、八尋の3人が朝から帰ってしまうので一人になるが、リレー
なのでスタート/ゴールが一緒だし、何とかなるだろう。
今日は大嶋君の20才の誕生日ということで、兼ねてコーチ陣で用意していたこと
を実行した。まず寺嶋君の交渉でレストランの厨房で持っていったお米を炊かせて
もらいチラシ寿司を作る。あとはお味噌汁だ。夕方のあいている時間にレストラン
の一角を借りての会食。田崎君が盛り付ける間も、久しぶりのご飯を見てみんなニ
コニコ顔だ。胃腸の調子の悪い人もこれで明日は頑張れるだろう。集合写真が撮れ
てなかったことに気づき、全員JAPANウェアを着て海岸に集合し記念撮影。
寝る前に歩ちゃん、山田、君香に最後のマッサージ。明日が最後だぞ、頑張れよ。
君香の肩は今日走ったらまったく違和感なく直ってしまったそうだ。亜脱臼だった
のかもしれない。

7月10日
朝は走順に従ってバス配車が行われているので順次朝食を取る。気温が比較的涼し
いのでこのままだと良いのだがと思う。リレーを見守れないまま帰る3人にバス停
まで荷物を運んでもらって別れる。会社の都合とはいえ最後までいられないという
のは残念だっただろう。特に寺嶋君は帰国後すぐにまたヨーロッパに出張とのこと
で、何でこのままじゃ駄目なのという感じだった。
会場に着くとショート予選のゴール地区と同じだった。太陽の回り具合を考慮して
東側のビジュアルポストのテープが張ってある前に陣取る。適当な木の枝を探して
きて日の丸を付けていると、隣に陣取ったスウェーデンチームが小さい旗をその上
に付けさせてくれと言って来る。上に付けられるのはとも思ったが、相手が相手な
のですんなり了承し、2段重ねの国旗となる。次のビジュアル用誘導ポストやラス
ポから出てくる辺りやスタート直後の道などのレイアウトを、許される範囲で観察
して回る。そうこうしているうちに9時が近づいて男子のスタート。田崎と大嶋が
マススタートエリアに入る。田崎は無難に帰って来るだろうが、足のある大嶋がど
んなレースをしてくるか大いに楽しみだ。スタート後100mくらいのところに陣
取りビデオを回す。スタートと共にかなりのスピードで集団が通過するが、日本の
2人は慌てず騒がず本当の最後尾だ。田崎も大嶋もしっかり地図を見ながら追走し
ている。それでいい! すぐに今度は女子だ。番ちゃんもひろみちゃんも今大会を
見てる限り信頼できる。スタートすると、これまた一番最後がJAPANトリムの
2人だ。
第1中間が出る。大嶋が田崎より少し先行しているようだ。すごい! やがて我々
の陣取ったビジュアル付近に人が集まり始め、トップの通過が近いことが分かる。
ビジュアルは男子で80%弱、女子で75%強ということだったが、35分経過し
ても誰も通過しない。少し難しいのだろうか。やっとトップ選手が通過したと思う
と、次々と林のいろんなところから選手が出てくる。と、54分で田崎が現れ歓声
が上がる。続いて1分後に大嶋が通過。やってくれるじゃないか! 「頑張れよ」
「慎重に行けよ」という応援を受けて再び山の中に消える。さらに1分後に今度は
番ちゃんだ。女子は10分後のスタートだから46分くらいだ。ひろみちゃんも、
1時間経過する直前にビジュアルを通過。これで全チームに楽しみが出てきた。
トップチームが帰って来た。タッチゾーンを駆け抜けるスピードはすごい。田崎が
来て加藤にタッチ。70分台だ。上出来だ。1分30秒遅れて大嶋がゴールし増田
が出て行く。最後に油断をしてちょっとミスったというが、良いレースをしてくれ
た。1分もしない内に番ちゃんのゴール。1時間は切れなかったが63分程度か。
山田頑張れと声援を送る。ひろみちゃんが84分で帰って来る。ウムが何時か分か
らないが、その役割は増山さんに受け継がれた。
人がゴールレーンに集まりはじめた。女子のトップゴールだ。ロシアチームが微差
でウクライナを制する。山田がゴールする前に優勝が決まってしまった。ついで、
スイスの Regula が帰って来る。3位だ。やがて山田が首を振りながら帰って来る。
本人としては不本意なできだったのだろうか、君香にタッチ。
加藤が帰ってきた。ほとんど田崎と同タイムだ。男子の優勝を見る前に帰って来て
くれた。3走の金澤が出て行く。やがて今度は男子のトップゴールだ。フィンラン
ドチームのウイニングランが本当に嬉しそうに行われる。その2分後、ゴールレー
ンを凄いデッドヒートで2人が競り合っている。フランスとスイスだ。最後はフラ
ンスが体一つ交わし、雄たけびを上げてゴールする。何度も叫び声を上げて本当に
嬉しそうだ。記録は何と1秒差。
オフィシャルランが12時からということで準備をする。そしてウムスタートは、
その5分前とアナウンスされた。女子は9時10分スタートだったので2時間45
分しかない。歩ちゃんが80分で帰って来ればタッチができる。みんなでラスポ寄
りの角に集まり歩ちゃんを待つがとうとう11時55分になってしまった。純ちゃ
んが男女1人ずつと一緒にウムスタートで出て行った。
オフィシャルランは3〜40人いるだろうか。男子コースは勘弁して欲しいと思っ
ていたが、希望を言う間もなく足元に地図が配られた。ちょっとめくって見ると女
子コースだったので安堵する。時間になり一斉にスタート。後で聞いた話だが、歩
ちゃんはこの時ちょうどゴールレーンに入って来たそうで、私のスタートを見たそ
うだ。ということはウムに5分間に合わなかったということか。最初の200mの
オープンはダッシュして6〜7人の先頭集団に食らい付き、地図を折る。登り道に
なったところで簡単にプランをし、注意深く尾根沢を横切って行く。最後の斜面を
登ったところで手前の小さなオープンが確認でき楽勝。その後途中で何度も北欧の
女子コーチと出会うことになる。5番を取って上に上がったところで5分前にウム
スタートした純ちゃんに追いついた。直進していく彼女を見ながら自分は沢の切れ
込みを避けて左寄りに進む。暑さでペースがぐんと落ちる。給水ポストで役員の人
と一言二言。53才だというと驚いていた。それでもラスポからは最後の力を振り
絞って、前方のよれよれした男を一気に抜いてダッシュ。みんなの声が聞こえる。
キロ10分の57分だった。最後に大きなミスをした狐塚君、そして純ちゃんが帰
ってきてすべてのレースは終った。

Men
 1 Finland 1      2:23:18      45:30   47:27   50:51
  2  France 1       2:25:05      51:04   44:22   49:39
  3  Switzerland 1  2:25:06      49:53   47:30   47:43
 40  Japan 1        3:40:42    1:10:40 1:10:57 1:19:05
 41  Spain 1        3:57:24
 42  Yugoslavia     3:59:09
 43  Japan 2        4:08:12    1:12:10 1:17:57 1:38:05
 44  USA            4:39:16

Women
  1  Russia 1       2:13:20      45:36   47:46   39:58
  2  Ukraine 1      2:13:22      42:33   49:07   41:42
  3  Switzerland 1  2:14:00      46:58   44:23   42:39
 34  Japan 1        3:46:27    1:02:56 1:15:14 1:28:17
 35  Japan 2        4:22:22    1:24:42 1:26:41 1:30:59
 36  Portugal       5:17:42

みんなもホッとしたのかTシャツやトリムの交換、記念撮影などに奔走している。
私は地元の出版社の取材で、日本のオリエンテーリングに関しての質問の回答を紙
に書かされる。タープが売れたということで丁寧に解体する。持って帰らなくて済
むのは嬉しい。何だかんだしていたら会場を出るのが最後の集団になってしまった。
前例があるのでバスのことを心配したが、今度は無事にバスが出た。
レースに関して言うと、今回は外国ではあったが比較的適応しやすいテレインだっ
たので、初めて北欧へ行った時のような「外国だから」という問題は少なかったと
言える。だから不本意なできに対しても、日本でもやっているミスがそのまま出た
ものだと、冷静に振り返ることができたと思う。
全体を通じて言えることは、やはりちゃんと準備をしてきた人にはそれに応じた結
果が得られたことだ。セレクションから2ヶ月間、つぶさに準備状況を観察して来
ていたので、各人が努力してきたこととの因果関係がいろんな形で感じられて嬉し
かった。選手諸君には、大会での結果がどうだったかということではなく、それを
目指して取り組んで来たことの方の価値を認識して欲しい。これからもそういう取
り組みの出きる人であって欲しいし、そうしてこそ前進するものだと思う。
宿舎に帰って荷物をまとめるが、まだ時間があるので最後の洗濯もする。フロント
に行って翌朝8時のタクシーを頼む。
9時からバンケットなので持って行った甚平に着替え、祭りうちわを出す。男子は
はっぴ、女子は浴衣になり廊下を歩くと途端に捕まって写真撮影になる。やはりこ
の姿は注目度ナンバーワンだ。海岸沿いにあるディスコに行くがどこで何をしたら
良いのか要領を得ない。主催者らしき人が一人いたので聞くと、ディスコの音楽は
無料だが飲み物などは自分で買ってくれという。ビールとピーナツ程度で始める。
12時になったので引き上げたが、みんなは2〜3時までいたらしい。と書くと何
も知らないように見えるが、その後のことは翌日になっていろいろ情報収集した。

7月11日
朝7時半から最後のミーティングを開き選手団を解団する。これからまだまだ遠征
を続ける人がうらやましいが、帰ってからそれぞれ報告書にまとめることを約して
帰途についた。

今回の遠征では本当ににいろいろなことがあった。そのこと自身も良い思い出だが
それ以上に若いみんなのエネルギーを吸収できたのが嬉しかった。一つのことに精
一杯取り組み、失敗を恐れずに挑戦する。その繰り返しがすべての原点であろう。

おわり